2012 Fiscal Year Research-status Report
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23530042
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
岡田 正則 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (40203997)
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Keywords | 国家賠償法 / 行政裁判法 / 行政裁判所 / 裁判所構成法 / 国家無答責 / 国の不法行為責任 / 公権力の行使 / 行政処分 |
Research Abstract |
2012年度においては、本研究のうち、国家賠償制度史に関する研究成果をまとめて書籍として公刊することを最優先の課題とした。2013年2月に公刊した『国の不法行為責任と公権力の概念史』(弘文堂)がその成果である。第一部「行政救済制度史研究の意義と課題」では、研究の全体像を示した後(第一章)、公法学における歴史研究の意義を示し(第二章)、行政事件と民事事件との関係(行政裁判所の司法裁判所の間で生じる管轄権の配分問題)および管轄事件配分の基準となる「行政処分」概念の歴史的・比較法的分析を行った(第三章)。第二部には、日本における国家賠償制度の形成過程を考察した「明治憲法体制確立期における国の不法行為責任」を、旧稿を補訂した上で収録した。 行政争訟制度史に関しては、日本における行政争訟法制の創設過程が世界史の中で有していた意味の分析を進めた。その概要については、上記書籍の第一部第四章「中間考察」で示した。 なお、<1867年オーストリア国基本法中の行政訴訟関係条項(15条等)と1875年10月制定の同国行政裁判所法およびフランスの委任司法に関する1872年法の調査>および<ドイツとフランスにおける行政裁判所の役割と比較しつつ、行政裁判所判決の検討作業を行うこと>を予定していたが、十分に進めることができなかった。2013年度の課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国家賠償制度の形成史に関する研究については、上記の通り、おおむね所期の目標を達成できた。一方、第二次世界大戦後の日本国憲法17条・29条3項・40条および国家賠償法の制定過程に関する研究については、今後の課題となった。また、行政争訟制度史に関しては、19世紀後半におけるオーストリアおよびフランスでの形成史との比較研究、行政裁判所判例の比較法的分析を予定していたが、十分に進めることができなかったので、 行政争訟制度史に関する達成度が十分でなかった理由は、国家賠償制度史の著書をまとめるための時間が予想以上に必要となり、2012年度後半に予定していた作業に余り労力を割けなかったことにある。また時間の不足により、必要な調査を行うこともできなかった。2013年度には、この遅れを取り戻すことにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のとおり、(1)国家賠償法の制定過程に関する歴史研究の部分に作業が及ばなかった。このための資料取得に要する費用を繰り越した。(2)書籍として公刊した国家賠償制度史に関する研究についてアメリカの学会で報告する機会を与えられたので、その準備を行う。(3)日本における行政争訟法制の創設過程が世界史の中で有していた意味を考察する。まず、1867年オーストリア国基本法中の行政訴訟関係条項(15条等)、1875年10月制定の同国行政裁判所法およびフランスの委任司法に関する1872年法の調査を行い、これらに関する日本法の継受の実情を分析することにしたい(これらの国を訪問して、資料収集と研究動向の調査も行うこととしている)。次に、ドイツ・フランス・オーストリアにおける行政裁判所の役割と比較しつつ、日本の行政裁判所判決の検討作業を行い、この中で、戦前の日本における行政裁判所の固有の役割と戦後における「否定的評価」の淵源を解明することにしたい。以上の作業によって、行政裁判制度史に関しても研究成果の公表に結びつけたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)国家賠償法制定の経緯、ならびに行政裁判法制の歴史研究および比較法研究に必要な書籍・資料を購入する。(2)マイクロフィルム等の形態で保管されている史料については、直接の複写あるいは複写・郵送の依頼などの方法で入手する。(3)行政裁判所判決についても、可能な範囲で(歴史研究にとって有意義であると考えられる範囲で)データベース化を進めたいと考えているので、そのための電子機器類・ソフトウェア類を購入する。(4)1860年代後半から70年代にかけてオーストリア・フランス・ドイツで進められた行政裁判法制の整備・創設に関する史料収集および調査を行う予定であるので、そのための国外旅費が必要であると考えている。(5)国内での行政救済法に関する研究会への出席や史料収集・調査のために、国内旅費も必要であると考えている。(6)5月にアメリカの学会(Law and Society Association)で国家賠償制度史研究の成果を報告するので、そのための出張旅費が必要である。(7)その他、事務用品の購入等を予定している。
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