2011 Fiscal Year Research-status Report
国連平和維持機能の実施における国際機構法と一般国際法の連関
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23530048
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
酒井 啓亘 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80252807)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際連合 / 国連平和維持活動 / PKO / 地域的機関 / 一般国際法 / 国連安保理 / アフリカ連合 / 欧州人権裁判所 |
Research Abstract |
本年度は主として以下の3つの角度から国連の平和維持機能と一般国際法の関係について考察を行った。 第一に、最近の国連平和維持活動(PKO)の動向につき、展開継続中のPKO及び新規展開(予定)のPKOの現状確認と分析を行うため、関連資料を収集するとともに検討を開始した。特に今年度はスーダンや南スーダン、シリアで新たな状況展開がみられたことからこれらの事例を重点的にフォローした。なお、日本の自衛隊部隊が派遣されているハイチと南スーダンのPKOについては、当該PKOの活動の法的性格のほか、日本の国内法との関係を分析対象として検討を行っている。その成果の一部は、「ハイチにおける国連平和維持活動と日本-国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)への参加問題-」として『法学論叢』に公表された。 第二に、平和維持機能をめぐる国連と地域的機関の間の関係について、資料収集のほか分析を開始した。この点では国連とアフリカ連合(AU)の関係を取り上げ、"New Relationship between the United Nations and Regional Organizations in Peace and Security: A Case of the African Union"という論稿を作業の成果として公表する予定である。 第三に、国連平和維持活動を規律する一般国際法規則の析出を開始した。この点では、関連する国際判例、特に欧州人権裁判所の裁判例を素材とすることからその判例分析の作業を行うとともに、国連国際法委員会での「国際機構の責任」に関する議論とその結論に関するフォローアップを行っている。本年度は資料収集と分析作業が中心であり、その具体的成果の発表は次年度以降を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国連平和維持活動やそのほかの国連機関の活動に関する資料についてはおおむね国連のホームページからダウンロードできることから作業は円滑に進行している。この点は、欧州人権裁判所・国際司法裁判所・欧州司法裁判所など各種国際裁判所に係る資料についても同様である。 他方、地域的機関の活動に関する資料、とりわけアフリカ連合(AU)や西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)といった機関に関係する資料は当該機関のホームページからのダウンロードでは限界があることから、資料収集についてなお時間を要するところもあり、分析作業に若干の遅れが出る可能性もある。 こうした状況の下ではあるが、いくつか一定の成果を公表できたことは、本研究テーマ全般に関する考察の足がかりを構築できたものといえ、その意味では順調に研究が進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでと同様に、研究テーマ全般について考察するための視点を定位させることを目的として、広く国連平和維持活動の現状分析や、国連と地域的機関との関係に関する検討を行うとともに、国連平和維持活動や国連が許可した多国籍軍による活動に適用される一般国際法規則の内実を特定した関連国際判例や国内判例、国家実行などを検証することが今後の課題となる。 また、そうした資料収集や現状分析と並行して、国連の機能の拡大とその制約に関する理論的枠組みの構築作業も行われることになる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記方針に従って、次年度も資料収集とその分析が主たる作業となり、そのための関連書籍等の購入のための費用が研究費から支出される予定である。 また、今年度は8月にブルガリア・ソフィアで国際法協会の研究大会が行われ、本テーマに関する専門家や実務家も集うことから、資料だけでは得られない貴重な情報を入手するため現地に赴き、インタービューなどを行うことにしている。このための旅費等が研究費から工面されることになる。
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[Book] 国際法2011
Author(s)
酒井啓亘・寺谷広司・西村弓・濵本正太郎
Total Pages
834
Publisher
有斐閣