2011 Fiscal Year Research-status Report
イノベーション市場・公益事業におけるドミナント規制の展開
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23530062
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
柴田 潤子 香川大学, 法務研究科, 教授 (90294743)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 市場支配的地位の濫用規制 |
Research Abstract |
経済社会における独占・寡占化の進展を念頭に置き,これに対応する競争理論の再構築を研究目的としている.まず,市場支配的地位にある事業者の濫用行為規制一般について,ドイツ・ヨーロッパの競争法における近年の理論展開及び判例分析を検討し,研究会で報告をした.独占・寡占化の進展は,とりわけ公益事業における問題として理解される.そこで,具体的に,電力エネルギー分野における規制と競争秩序の組み合わせについて,ドイツ・ヨーロッパ法を手がかりに検討をし,研究会等で報告をした.電力事業に関しては,ドイツ・ヨーロッパでは,競争法との関係で事例も増えてきており,またそれとの関係で発送電分離,いわゆるアンバンドリングの議論も活発である.ヨーロッパの委員会が展開するアンバンドリングの理論的な分析と主要加盟国であるドイツにおける規制の実態を対比して検討を行い,構造的な措置とドイツにおける価格規制の有機的な組み合わせが有益であると考えられる.次に,同様に規制産業として経済社会において重要性を持電気通信事業に関しては,電力産業とは異なり,技術革新も著しく,競争秩序の導入も進んでいるといってよい.しかしながら,依然として旧独占者が著しい支配力(SMP)持つことを前提にした規制の仕組みがヨーロッパでは採用されており,これに着目して,とりわけ,歴史的な観点からSMP規制の意義・役割を検討した.かかるSMP規制わ我が国において用いる場合に考慮すべき点の研究を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
市場支配的地位の濫用規制理論,判例の蓄積があるドイツヨーロッパ法の検討を行ってきている.一般的な濫用規制の理論,判例を研究し,報告を行うことができた.また,具体的に公益事業として電力エネルギーについては,ドイツヨーロッパの規制を手がかりにして,競争と規制の在り方を明らかにする研究を進めてきている.電気通信事業分野についても競争法との関係で重要であるSMP規制について歴史的観点を出発点として研究を進めてきており,今後は実態把握を前提として,理論及び実際の法適用に重点を置いて電気通信事業における規制の在り方を探る基礎を構築した.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,一定のマーケットパワーないしは市場における地位を前提とした規制として,いわゆる優越的地位の濫用規制に着目する.優越的地位の濫用規制については,日本の独占禁止法とドイツの競争制限防止法が比較の対象となると考えている.まず,相対的な関係における濫用規制として,これらの法規定の異同を明らかにする.ドイツ法の相対的に優越している事業者に対する規制は,市場支配的事業者に対する規制との連続性がかなり強いように思われるため,次に,市場支配的地位の濫用規制との異同を明確にする必要がある.このようにして,一定のマーケットパワーに基づく濫用規制の在り方を包括的に明らかにする.さらに,具体的な公益事業分野として,電力エネルギーに関するドイツ・ヨーロッパの規制理論判例を発表する.とりわけ,ドイツの議論を基礎に構造的措置と競争法による規制の有効な組み合わせについて一定の理論を構築する.電気通信事業について,従来のSMP規制の研究を現代の実態に応じて展開し,具体的な法運用を分析する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
東京経済法研究会等の研究会に参加し,議論を深める.文献に基づく理解を補充かつ発展させる.イギリス及びドイツで資料収集を行い,また,従来からコンタクトを維持しているドイツの競争当局の実務家や研究者と意見交換を行う.ドイツ競争制限防止法は,優越的地位の濫用規制と市場支配的地位の濫用規制を有しており,特に我が国の比較に有用であると考えている.ドイツの理論を検討するなかで得られた見識を,実際に運用する競争当局の実務家や研究者と意見交換を行うことによって,確認,発展させ,かつ問題点を再認識出来ることが期待できる.公益事業分野に関する文献は,かなり特殊性があり,海外の図書館等で実際に確認しながら収集することが有益である.日本でまとめて資料収集することは困難である.今年度の研究を公表していくために,PC関係の整備を充実させるためにソフトウエア等も購入する.独占・寡占分野,公益事業に関する分野については,新しい文献を常に必要とする.とりわけ洋書は高額であるが,随時公表された時点で可能な限り購入する.
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Research Products
(3 results)