2012 Fiscal Year Research-status Report
国際競争力の見地にも配慮したコンプライアンス・プログラムの有効性とその限界
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23530075
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐久間 修 大阪大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00126864)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重井 輝忠 大阪大学, 高等司法研究科, 准教授 (80335497)
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Keywords | コンプライアンスプログラム |
Research Abstract |
平成24年度は、前年度(平成23年度)に収集した内外の文献や資料を参考にしつつ、特に会社不祥事や刑事事件となった事案の分析などを進めた。具体的には、会社法上の罰則や金融商品取引法の刑事規制を中心として、現行法令に盛り込まれた処罰規定の運用の在り方を検討した。また、これに関連して、実際の事件を処理する実務法曹から、企業法務の実情を報告して頂くとともに、今後どのような対処が望ましいかについて、具体的な提言を示して頂いた。また、学説と実務を架橋するため、研究会の参加者相互で意見交換をおこなうとともに、企業法務のプロを目指す法学部生や法科大学院生に対して、これらの知見をどのように伝えるべきかも含めて、研究会の参加者全員にアンケートを実施するなど、各層の意見を収集することで、より具体的な法規制の在り方を探った。なお、これらの研究成果を書物にまとめるべく、『刑法からみた会社法務(会社法・金融商品取引法編)』の執筆を開始して、全体の3分の1程度まで書き進めた(中央経済社より公刊予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、近年の企業法務における動向や、現場における担当者の意見を聴取するために講演会や研究会などを開催した。これらは、実務における状況分析を中心とした作業であり、他方では、すでに収集した参考文献から得た知見にもとづいて、わが国の企業法務に欠けているものは何か、今後どのような取り組みが必要であるかについての情報を収集した。また、一般に市販されているコンプライアンス・プログラムやコンプライアンス・マニュアルの内容について調査するとともに、法学部生や法科大学院生などを対象とした講演会を開催して、主に法曹養成という視点から、会社法務の専門家を養成するために必要な科目の設置など、研究者教員や会社法務の関係者による研究会も開催した。 具体的には、2013年1月26日(土)14:30~に、立命館大学二条キャンパスで開催された研究会に参加した。そこでは、木村光江氏(首都大学東京)より「2006年イギリス詐欺罪法について」、および、伊東研祐氏(慶應義塾大学)より「『特別背任罪』の解釈視座 ― 立法の顛末」と題する2つの報告があり、諸外国の財産犯をめぐる最新の犯罪情勢や、わが国の特別背任罪の立法経過と今後の解釈方法について議論した。また、2013年1月31日(木)13:00~には、大阪大学豊中キャンパスにおいて、上田正和弁護士(弁護士・大宮法科大学院大学教授)より、「企業による人身被害事故に対する企業側の備えと対応」と題する講演会とスタッフセミナーを開催した。さらに、2013年2月9日(土)13:00~には、大阪大学豊中キャンパスにおいて、後藤啓二弁護士(後藤コンプライアンス法律事務所)より、「コンプライアンスの実像と虚像」と題する講演会とスタッフセミナーを開催した。そこでは、経済犯罪における特捜部の役割や企業不祥事とその後の対応をめぐる問題点が指摘された。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(平成25年度)は、会社法務の実情をさらに掘り下げるための作業を進める一方、これまでに総括した諸問題や今後の在り方に関する研究成果を、大学の内外に発信するためのホームページを開設する。また、このホームページにアクセスした会社法務の関係者から得られた情報も取り入れつつ、さらに今後の改善策にフィードバックさせる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、平成23年度及び平成24年度に収集した各種データや調査結果をもとにして、さらに追加的に必要となるであろう資料の購入や、前年度に開催した講演会や研究会に引き続く同種の行事の開催費用に充てるほか、一定の研究成果をまとめて発信するとともに、広く会社法務の現場から意見を聴取するために開設するホームページの開設費用や、さらに研究成果として出版する書籍の諸費用に充てることにする。
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Research Products
(12 results)