2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530084
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
小粥 太郎 一橋大学, 法学研究科, 教授 (40247200)
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Keywords | フランス |
Research Abstract |
(1)日仏法学共同研究集会における研究成果のひとつとして、同集会に参加した日本人研究者たちと、同集会を振り返る機会を持つことができた。これは、情報という問題に関する日仏法の比較を、公法、私法、刑事法、比較法原論などの見地から行うものであり、これらの問題に関して、有意義な意見交換をすることができた。その記録は、論究ジュリスト第1号に掲載された。 (2)個人の情報が攪乱され、あるいは、不当に暴かれるなどする場合には、名誉毀損やプライバシー侵害という問題が起きる。これらの問題に関する民事法の研究は、名誉の意義、プライバシーの意義をそれぞれ掘り下げるものはあったけれども、両者を関連づける研究や、不法行為法の文脈に即していえば、侵害行為の態様に焦点をあてるものは、必ずしも多くなかった。そこで、個人の情報、とりわけ、名誉・プライバシーに関して、保護法益の相関関係、人間像などに考察を及ぼしつつ、不法行為法の一般理論との関係にも留意する研究が必要だったところ、「名誉毀損からみた不法行為法」においては、これらの問題に関する研究の端緒を書きとどめることができた。また、同論文は、民法の解釈方法、あるいは民法学の方法についても、一定の視点(学者の視点と裁判官の視点の区別)を提供するものである(この論文は、研究成果の図書欄に掲げた本に収録された)。 (3)人の身分に関する情報提供媒体として重要なものは戸籍である。現在、戸籍制度と家族との関係に関する勉強を少しずつはじめている。ひとつの成果は、平成25年5月ころに口頭発表する予定である。これとは別に、不動産に関する情報提供媒体として重要な不動産登記と戸籍とが交錯する問題領域としての、相続不動産取引の問題について、不動産登記と戸籍という情報媒体の視点を重視した研究論文を公表することができた(相続不動産の取引の安全。「民事研修」2013年1月号)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
基本的に当初の予定どおりに研究は進行している。 予想以上に進展したと自己評価した理由は次のとおりである。 (1)「名誉毀損からみた不法行為法」を、公表することができた。もともとは、日仏研究集会における報告記録以上の検討ができるとは思っていなかったところだが、主観的には、その報告記録の内容を一歩すすめることができた。これは、個人の情報保護などを、不法行為法の視点から分析するものであり、また、民法解釈方法論、民法学方法論についても考える機会が得られた。 (2)不動産登記、戸籍という問題との連関を実感したこと。情報という観点からすると、不動産登記や戸籍も、関係する問題である。申請時の研究計画を書いている時点では気づかなかったが、これらも、情報という観点から民事法システムを見直すときに、重要なテーマであった。研究期間の間には、これらの問題についても、機会をみて、研究を深めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)民事法システムの見直しの前提となる契約法・不法行為法の基礎的課題について、研究報告を行い、成果を公表する(請求権競合問題)(平成25年度内に公表予定)。 (2)戸籍という情報提供媒体について勉強して、家族法と戸籍の関係について、口頭報告を行う(平成25年度中に口頭報告予定)。 (3)民事法システムの見直しの前提となる民法の体系について、東日本大震災などの危機的状況に直面してどうなるのか、という観点から、再検討を試みる(平成25年度内に公表予定)。 (3)民事法システムの基礎となる制定法・判例の関係について、現代に即した分析検討を行う(平成25年度内は公表の準備)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
必要な図書・雑誌の購入を中心に支出する。 研究の推進方策(3)の研究のため、学会出張の支出をする。
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