2013 Fiscal Year Annual Research Report
ABLにおける債務者の目的財産の処分権能と担保権の効力の相克に関する研究
Project/Area Number |
23530086
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
池田 雅則 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (20261266)
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Keywords | 集合財産 / 集合動産譲渡担保 / 集合債権譲渡担保 / 流動資産担保 / ABL / 倒産法 / 事業再生 / 処分授権 |
Research Abstract |
最終年度である本年度においては、とりわけ近時わが国においてABLにおける流動資産担保の効力の帰趨として問題となる設定者に対する「処分授権」との関係で、処分授権に反した処分が流動資産担保権者に対して詐害的な処分として効力を否定されるのではないかとの議論があるが、ドイツ法において同様の枠組みで判断がなされているのかについて判例学説などを整理検討するとともに、ABLにおいて用いられる流動資産担保の効力の帰趨について日独両国における判例学説を整理検討した。この結果、流動資産担保の効力の帰趨という観点からの検討では、処分授権との関係での詐害的処分についてドイツ法の下において明確に問題とされているわけではないことが確認できた。 また、昨年度に引き続き、ABL協会の下で企業破綻時におけるABLの効力のあり方を探るABL法制研究会に参加し、諸外国の制度の概要や実務の特徴に関する知見の獲得に努めるとともに、ドイツにおいてわが国では入手困難な文献資料の収集などを通じて、ドイツ法の下におけるABLの現状についての情報収集に努めた。 研究期間全体を通じて、ABLにおける流動資産担保の効力の帰趨について、とりわけドイツ法を比較法の対象としたことによって、ドイツ法にあっては設定者の経営が順調に機能している局面においては、流動資産担保の法律構成を基礎として演繹的に効力を定めようとするのに対して、設定者の経営状態が悪化し、倒産局面に入った場合には、担保権の法的性格付けが変化するとともに、具体的な換価方法の点でも大きく異なった制度となっていることを確認することができた。このことは、いわゆる平時と危機時において法的性質を貫徹させようとするわが国担保法制に大きな示唆を与えるものと思われる。 以上の研究成果の一部については、ABL法制研究会において「ドイツ法における動産譲渡担保の効力について」と題して、発表した。
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