2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23530087
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
上山 泰 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (50336103)
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Keywords | 成年後見制度 / 制限行為能力制度 / 法定代理権制度 / 障害者権利条約 / 意思決定支援 / legal capacity / 国際情報交換 / 多国籍 |
Research Abstract |
平成25年度は、本研究の総括として、障害者権利条約12条からみた成年後見制度の課題点とその改善の方向性を示した4本の論文を公刊した。まず、本研究の中核である同条とわが国の制限行為能力制度の抵触について、国連障害者権利委員会による最新の総括所見等を分析した。前年度までの研究成果と今回の分析結果を併せることで、①条約成立時点では、最後の手段として、必要最小限の範囲での行為能力制限と法定代理人選任の余地があったこと、しかし、②条約の国際的実施の段階に至って、「代理・代行決定から意思決定支援へのパラダイム転換」という12条の理念がいささか過度に強調され、従来の成年後見制度を廃絶して、支援付き意思決定制度に全面的に置き換えることが強く要請される状況となっていることを明らかにした。加えて、本年度分析したオーストラリアへの総括所見から、③障害者権利委員会が留保や解釈宣言を通じた必要性最小限度での代理・代行決定の維持にすら否定的な立場にあることが明らかとなった。以上の分析から、④わが国の法定後見制度についても、画一的能力制限の要素を持つ後見類型・保佐類型はもとより、補助類型も含めて、近い将来に行われる国際モニタリングにおいて、その全面廃止を求める厳しい勧告を受ける虞があることを明らかにした。さらに、こうした勧告への対応策として、現在の制限行為能力制度に基づく取消権の実効性について、わが国最大の専門職後見人団体であるリーガル・サポートのアンケート調査結果の分析を行い、①取消権が現実に行使される事案が意外と少ないこと、②取消権行使の頻度は本人の能力低下の程度と反比例する(補助で多く、後見で少ない)ことを明らかにした。加えて、③親族間の贈与等の親族内紛争で取消権に対する一定のニーズがあるため、制限行為能力制度による保護の全てを消費者保護法制に解消するのは難しい可能性があることを示した。
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Research Products
(5 results)