2013 Fiscal Year Research-status Report
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23530088
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
木村 真生子 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (40580494)
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Keywords | 証券法 / 会社法 / カナダ |
Research Abstract |
昨年度行った合法的なインサイダー取引の研究に続き、本年度は、違法なインサイダー取引とTippingに関する規制と判例法についての研究を推進することを目的とした。カナダでは、違法なインサイダー取引を規制する方法として、証券法、会社法、刑法上にそれぞれの規制がある。このうち、証券法の規制と主要判例についての分析を進めた。 証券法上、インサイダー取引の違法性を決するのは、特別な関係(special relationship)、重要事実(material fact)、重大な変更(material change)、公表(generally disclosed)の4要件である。しかしながら、各文言は抽象的であり、学説、判例、行政庁(CSA)が異なる見解を出しており、その解釈は決して容易とはいえないことがわかった。 そこで、まず、この4要件に関わる主要判例(Re Donnini 判決、Pezim v. British Colombia等)を読み込みながら、トロント大学のRoberts Libraryで収集した複数の判例評釈を合わせて読み、問題の所在について理解を深めた。 なお、Materialityの解釈については、カナダはアメリカの判例法の影響を強く受けている。このため、アメリカのMaterialityの概念についても同時に研究を行った。その過程で、アメリカでは、現在、Basic判決を批判する判決が現れるなかで、Materialityの概念に揺らぎが生じ始めたことがわかった。カナダの判例法にも何らかの影響が及ぶことが予想される。 このように、本年度は、各Topicについて深く掘り下げて検討を行ったことから、研究成果を公表物までに仕上げることはできなかった。しかしながら、カナダのインサイダー取引規制についての理解を、より深めることができたように思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
インサイダー規制の概要、合法的なインサイダー取引規制についての考察は終え、違法なインサイダー取引の規制の概要を理解した。また、主要な関連裁判例の読み込みも半ばまでは終えている。さらに、カナダ法へのアメリカ判例法の影響を概ね理解した。
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Strategy for Future Research Activity |
カナダでは2013年度、アルバータ州において、Materialityの解釈に関わる重要判決が出たほか、特別な関係(special relationship)に関する条文の改正が検討され始めており、従来のインサイダー規制も刻々と変容し始めている。 しかしながら、2014年11月及び2015年5月に発行される筑波ロー・ジャーナルに一応の研究成果を公表する必要性から、本年度は、研究テーマについて深堀りをすることは極力避け、(1)違法なインサイダー取引とTippingに関する規制と判例法と、(2)規制違反に対する措置について、それぞれ研究成果をまとめあげたい。 なお、(1)については、規制の大半を占める証券法上と、会社法、刑法上の規制について、最近の判例や規制の変化を考慮に入れながら研究を進めて整理を行い、 (2)については、民事責任、刑事責任、課徴金(行政罰)についてそれぞれまとめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
カナダで昨年出た重要判決や、条文改正の動きを追う必要があるため、最新の情報を入手するための文献収集費として、来年度に研究費を繰り越しておく必要が生じた。 SarnaのInsider Trading-A Canadian Legal Manual(LexisNexis)の追録のための費用にあてるほか、オンタリオ証券法の2014年度版の解説書や、新たに刊行される証券法関連のテキストの購入、文献のコピー費等にあてる予定である。
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