2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23530094
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
中舎 寛樹 明治大学, 法務研究科, 教授 (10144106)
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Keywords | 意思的関与 / 表見法理 / 多角的法律関係 / 認容 / 合同行為 |
Research Abstract |
本研究は、民法上、法律行為が存在していないにもかかわらず、それが成立しているのと同様の法律効果が発生するとされる場面を素材として、その際の責任根拠とされる「意思的関与」が法律行為論ないし意思表示論との関係でどのように位置づけられるべきかを理論的に明らかにすることを目的としている。 本年度は、3年間の研究の最終年度にあたるので、これまでの研究を総合して結論をまとめ上げることをめざした。まず、本研究の第一の場面である表見法理については、前年度までに、民法上の各表見法理における帰責根拠が真の権利者ないし本人の「認容」にあることを明らかにしえたので、本年度は、代表的な表見法理である表見代理について、ドイツとわが国の理論研究を分析・検討し、表見代理では、認容(Duldung)こそが本人の帰責根拠であると理解されていることを明らかにするとともに、わが国における表見法理全体の帰責根拠も「認容」の観点から統一的に理解できることを明らかにした。この研究成果は、来年度中に『表見法理の帰責構造』として刊行されることが決定している。 また本研究の第二の場面である多角的法律関係については、前年度までに、多角的法律関係が全体システム(取引の構造)と個別システム(個別契約)との重層的関係により基礎づけられることを明らかにしたうえ、全体システムが当事者による取引共同体の形成であるという点で団体法的な側面があることから、当事者の意思表示には、個別契約を締結する意思表示以外に、全体システムとしての基本契約を形成するための「合同行為的な意思表示」が含まれていると構成できることを明らかにし、それに関する論文を収めた『多角的法律関係の研究』を共編者として刊行したので、本年度は、その具体的な応用場面として、保証取引およびファイナンス・リースを取り上げ、これらを多角的な法律関係として位置づける必要性と有用性を主張した。
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