2011 Fiscal Year Research-status Report
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23530095
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 敬三 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80191401)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 差別 / 平等 / 基本権 / 人格権 / 私法 / 国際情報交流(ドイツ) |
Research Abstract |
平成23年度は、次の3つの作業を平行して行った。 第1に、ドイツにおける一般平等取扱法の制定過程及び制定後の議論状況の調査・検討を行った。当初の計画では、専門家との意見交換及び資料の収集・調査を行うべく、ドイツを訪問するための費用を計上していたが、平成23年9月に、研究代表者がドイツ学術交流会及びミュンヘン大学により招待講演を依頼され、ドイツを訪問することとなったため、本科学研究費より費用を支出する必要がなくなった(そのため、平成23年度にこの費用にあてることを予定していた研究費の一部を平成24年度の活動にあてることとした)。しかし、結果として、当初予定していたドイツにおける調査は滞りなく行うことができた。 第2に、ドイツにおける基本権保護義務論と一般平等取扱法の関係をめぐる議論状況を調査・検討した。基本権保護義務論については、研究代表者がこれまで行ってきた研究をまとめ、研究書として公刊するための作業を進めた。ただし、一般平等取扱法に関する研究成果を盛り込むことも考えられるため、平成23年度は、基本権保護義務と平等権との関係を中心に調査・検討を進めた。 第3に、内閣府の障がい者制度改革推進会議差別禁止部会において行われている「障害を理由とする差別の禁止に関する法律」の制定に向けた審議に委員として参画し、立法の必要性と課題に関する検討を行い、立法の必要性について積極的に提言を行った(研究代表者の発言を含む同部会の議事録はhttp://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/kaikaku.htmlにおいて公表されている)。この審議の過程において、障害者権利条約及びドイツ以外の国々における障害者差別に関わる大量の情報を収集することができたほか、障害者団体等を通じて、様々な領域における差別に関する多数の事例を収集することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画で予定していた上記3つの作業は、おおむね予定どおり行うことができた。 第一に、ドイツにおける一般平等取扱法に関する調査は、上記のとおり、当初予定していたとおり滞りなく行うことができた。 第二に、基本権保護義務論に関するこれまでの研究成果をまとめる作業は、平成23年度中には終了しなかったものの、これは当初の予定と異なり、本研究の成果を盛り込むことを考えたためであり、むしろ本研究が進捗していることによるものである。 第三に、差別禁止部会においては、研究代表者が予想していたよりもはるかに多くの情報と知見を得ることができ、今年度以降に作業を進めるための基礎を形成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成23年度の成果を踏まえて、当初の予定にしたがい、次の作業を平行して行うことを予定している。 第一に、ドイツ一般平等取扱法に関する調査・検討を継続する。その際、平成24年度は、あらためてドイツを訪問し、平成23年度の成果を踏まえて、専門家と意見交換を行い、必要な資料の収集・調査を継続して行うことを予定している。 第二に、日本における平等権と人格権・社会参加権に関する議論状況を調査・検討することにより、私法関係における差別禁止法理の理論枠組みの検討を進める。 第三に、日本における平等権と人格権・社会参加権に関する議論状況を調査・検討することにより、私法関係における差別禁止法理の理論枠組みの検討を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度において、当初の予想を超えて大量の資料を収集することができたものの、作業を効率的に進めるためには、それらの資料及びそこにおける情報を分類・整理することが不可欠となっている。しかも、差別禁止部会における審議が加速し、平成24年度秋を目途に立法提案を取りまとめることが予定されているため、そうした資料の分類・整理を迅速に完了するため、平成23年度に節約できた費用を利用して、一定期間、研究補助者を雇用することを予定している。 その他は、当初の計画にしたがって、次の作業を行う。その成果は、上記の差別禁止部会における審議の中で研究代表者の意見・提言として反映させていくことを考えている。 第一に、ドイツ一般平等取扱法に関する調査・検討を継続する。その際、平成24年度も、ドイツを訪問して、平成23年度の成果を踏まえて、専門家と意見交換を行い、必要な資料の収集・調査を行うことを予定している。 第二に、私法関係における差別禁止法理に関する理論枠組みの検討を進めるため、日本における平等権と人格権・社会参加権に関する調査・検討を行うことを予定している。 第三に、特にドイツにおける締約強制論に関する議論の調査・検討を行うことにより、私法関係における差別禁止の救済法理に関する検討を進める予定である。
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Research Products
(4 results)