2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23530099
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松井 和彦 大阪大学, 高等司法研究科, 准教授 (50334743)
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Keywords | 不安の抗弁権 / 履行拒絶権 / 契約の危殆化 |
Research Abstract |
本研究の最終年度である平成25年度は、主として、過去2年度に行った研究を論文にまとめる作業を行った。 第1に、訴訟において不安の抗弁権が適法に主張された場合の法律効果について、ドイツ法の議論を踏まえて検討を行った結果、次のように解することが妥当であるとの結論に至った。まず、給付訴訟において被告となった先履行義務者が不安の抗弁権を主張した場合には、引換給付判決が下されるべきである。しかし、先履行義務者が引換給付を求めて訴訟を提起することはできない。これは、不安の抗弁権がもつ防御的な性質からの帰結である。 第2に、不安の抗弁権を適法に主張した後、先履行義務者は契約を解除することができるのかについて、ドイツ法その他の国際取引法規範を踏まえて検討を行った結果、次のように解することが妥当であるとの結論に至った。先履行の合意の中には、後履行義務の履行期が先履行義務の履行を前提に設定されていることがあり(納品後1か月以内など)、この場合には、先履行義務が一時的に停止された状態でいつまで待っても後履行義務の履行期は到来せず、先履行義務者の側で相手方を遅滞に陥らせて解除をするという通常の手順を踏むことができない。そこで、このような難点を解消するため、不安の抗弁権を適法に行使した先履行義務者に対し、反対給付の危殆化を解消させるための何らかの担保供与を求めて相当期間を設定することを認め、この期間内に危殆化が解消されない場合には、契約を解除する権利を付与すべきである。 これらの検討結果を、書物にまとめて出版した。 第3に、不安の抗弁権に関する法規定ないし法理論の波及効果として、先履行権利者の財産状態悪化を理由に先履行義務者に無催告解除権を付与する約款条項の有効性について、検討を行った。この検討は、前年度からすでに行っていたものであるが、平成25年度はその検討結果を論文にまとめて公表した。
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