2011 Fiscal Year Research-status Report
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23530114
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
草鹿 晋一 京都産業大学, 法務研究科, 教授 (30327118)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 民事訴訟法 / 民事上告審 |
Research Abstract |
1 具体的内容 今年度は、基礎となる判例データベースの構築のため、従来調際していた最高裁判決等のデータをpdf化し、パソコン内で管理できるようにした。これによる直接の成果はまだ公表できていない。なお関連する研究として、最高裁第二小法廷平成23年4月13日決定(即時抗告の相手方に攻撃防御の機会を与えることなく申立てを却下した抗告裁判所の 審理手続に違法があるとされた事例。以下「対象決定」という)について、TKCローライブラリーに判例解説を執筆する機会を得た(http://www.tkclex.ne.jp/commentary/pdf/z18817009-00-060340718_tkc.pdf)。2 研究の意義および重要性 本判例解説の直接の解説事項は抗告審の審理手続における手続保障のあり方に関するものであるが、対象決定は本研究との関係では、特別抗告審においても本研究の対象である職権破棄がおこなわれているという実例として意義のある裁判例である。抗告審における職権破棄の当否については争いのあるところであり、許可抗告制度導入の経緯からその行使は慎重にされるべきとする学説もある中、対象決定は改めて職権を行使し原決定を破棄したものである。対象決定による職権の行使は妥当なものであると考えているが、対象決定は、最高裁判所による職権行使の実態を解明せんとする本研究の意義を再確認させ、今後さらに研究対象を抗告手続まで拡大する必要性を示唆するものとして重要な意義を持つものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1 遅れの状況とその理由 本年は、過去の研究による基礎資料をデータベース化し、さらにアップデートすることが目標であったが、東日本大震災の影響で研究に必要な機材の納入が遅れ、データベースの構築に支障が出た。そのため、目標であったデータベースのアップデートまで実施することができなかった。さらに年末になり、かねて共同研究として申請していた科研費(A)(研究課題:司法サービスの新たなパラダイムとその展開-質を重視した司法過疎対策の研究。研究分担者)が追加採用となり、その関係で震災,津波による被災地へ急遽調査に向かうことになり、本助成研究を一時的に中断せざるを得なくなった。本件調査は被災地における司法サービスの状況を調査し、今後の対応について提言するためのものであり、緊急性が強かったため、やむを得ず優先したものである(なお、調査の成果は6月の日本法政学会シンポジウムにおいて報告することが決まっている。)。2 今後の見通し 上記の理由で若干予定より遅れているとは言え、関連する裁判例について判例解説を執筆するなど本研究課題に関する研究も実施しており、遅れは限定的なものであり、十分回復可能なものであると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は以下のとおり。 (1)昨年度作成した基礎データベースを更新し、精度を高める。 (2) 分析結果について9月以降に開催される関西民事訴訟法研究会において中間報告をおこなう。 (3)中間報告に対する会員の意見をふまえ、今年度後半から次年度にかけて、研究成果を取りまとめる。 (4)取りまとめた研究結果について、学会等で報告し、その成果を公にする。 (5)抗告手続についても同様の分析が必要なことが昨年度の研究により明らかになっている(研究成果参照)ので、その問題点等を抽出し、今回の研究助成ですべきこと、今後の研究課題とすべきことを明確にする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の主な使用予定は以下のとおりであり、事前の助成申請額の範囲内で対応可能である。 (1)使用するソフトウェアのバージョンアップに応じた更新。 (2)新規研究等の継続調査(改訂された文献の補充を含む)。(3)データベースのバージョンアップのためのアルバイト経費。(4)研究成果の検証のための訪問調査および成果発表のための旅費交通費。
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