2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530117
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
木村 仁 関西学院大学, 法学部, 教授 (40298980)
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Keywords | 信託法 / 指図権者 |
Research Abstract |
イングランド、アメリカおよびオフショアのプロテクターに関する議論を参考に、受託者以外の指図権者等が信託事務処理に関与する権限を有している場合において問題となる下記の法的論点について分析し、我が国の信託法の解釈に対する示唆を検討した。 第一に、指図権者等に付与できる権限の範囲につき分析を行い、信託法92条各号の単独受益権を、信託監督人、信託管理人または受益者代理人以外の第三者に付与することはできないと解すべきとの結論を得た。 第二に、信託業法が適用されない指図権者等について、イングランドおよびオフショアの判例を参考に、指図権者等の性質、指図権等の内容により、指図権者の義務、その法的構成、義務を免除できる範囲が異なることを示した。すなわち、信託財産の分配に関する指図権を有する者、信託財産の管理に関する指図権を与えられた者、そして同意権を与えられた者のそれぞれにつき、善管注意義務の具体的内容、信託行為の定めにより指図権者の善管注意義務を免除できる範囲を検討した。 第三に、指図権者等の権利行使に関して、受託者がいかなる責任を負うかを考察した。特にアメリカの州制定法の近年の動向およびリステイトメントを詳細に検討したうえで、我が国における解釈論として、受託者の性質、受託者が有する情報、指図の内容等に照らして、当該指図が信託の目的または受益者の利益に明らかに反することを受託者が知り、または知るべきであったときは、受託者は直ちに指図に従うことをせず、指図権者に再考を促し、受益者に通知することが、信託の本旨に適合する事務処理として求めるべきであるとの結論に達した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロテクターに関するイングランドの判例・学説、オフショアの判例、ならびにアメリカの州制定法、学説およびリステイトメント等を詳細に検討したうえで、指図権者等に付与することのできる権限の内容、指図権者等が負う義務とこれを信託行為の定めによって免除できる範囲、そして、指図権者等による権限の行使があった場合における受託者の責任につき、考察することができ、研究は順調に進展している。特に、その成果の一部をまとめて、「指図権者等が関与する信託の法的諸問題」法と政治64巻3号67頁~152頁(2013年)として公表することができたことは、相当程度、研究の目的を達成したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、英米の研究者とのさらなる意見交換を通じて、指図権者等が指図権等の行使にかかわる情報を受益者等に提供する義務を負うべきか否か、その行使に係る費用を償還請求できる範囲等について、検討を行う予定である。 以上の点につき、オフショアの制定法、アメリカ法を比較検討の対象として、分析を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、Cambridge大学のWorthington教授と意見交換を行い、指図権者の費用負担と情報提供義務および受託者の責任との関係について研究を進める予定であったが、同教授との都合が合わず、インタビューが実現しなかった。したがって、この意見交換に係る経費について未使用額が発生することとなった。 イングランド法における指図権者の費用負担と情報提供義務および受託者の責任との関係につき、さらなる文献を入手したうえで、Cambridge大学を訪問し、Worthington教授との意見交換を行うために、使用することを計画している。
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Research Products
(2 results)