2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23530121
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
星野 豊 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (70312791)
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Keywords | 知財信託 / 国際信託 / 法適用原則 |
Research Abstract |
本年度は、本研究での検討結果をとりまとめ、学術論文として完成させた。具体的な検討結果は、次のとおりである。 1. 信託関係は、理論的に等価値の複数の理論構成によって説明されうるが、国際的な知財信託に関する法適用原則を検討する際にも、この複数の理論構成との関係を常に意識する必要がある。 2. 国際信託に関する法適用原則に関しては、①信託の設定と有効性、②信託財産、③信託財産の管理、④受益権、⑤信託に対する監督、⑥信託関係と第三者、⑦信託の変更・終了・継続、の各局面において、信託の基本構造に関するどの理論構成を採用するかによって、それぞれ解釈の方向性や結論が複雑に交錯している。かつ、前述のとおり、信託の基本構造に関する理論構成については、理論的に優越するものが存在しない以上、信託関係当事者間の個々の合意の解釈を行わざるを得ず、この解釈自体が判断者や法域等によって画一的なものとならないため、議論はさらに不安定なものとなる。 3. 他方、知財信託の理論的特徴について、本研究では、過去の研究や他の制度との連続性を考えやすい無形財産の信託としてでなく、敢えて権利者の知的活動としての側面に重点をおいて検討を加えた。この考え方の下では、国際的な知財信託に対する法適用原則に関しては、信託関係当事者や信託財産の所在地、信託財産の管理地のほか、さらに、知的活動を行った者が属する国家、知的活動が行われた地、知的活動の成果が知的財産に結実した地、のそれぞれの法が、どのように影響するかが問題となる。また、受益権と信託財産とを同一の財産でないと考えれば、議論はさらに発展することとなる。 以上のとおり、現段階では、実務上明確な基準は見いだせていないものの、理論的な方向性がほぼ明らかになってきた状況であり、本研究期間の終了後もさらに研究を継続し、理論上のみならず実務上有益な視点を獲得できるよう努力したい。
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Research Products
(7 results)