2011 Fiscal Year Research-status Report
野生動物保護管理の推進に必要な狩猟者の法的位置づけ及び権利関係等に関する研究
Project/Area Number |
23530124
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
高橋 満彦 富山大学, 人間発達科学部, 准教授 (10401796)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田口 洋美 東北芸術工科大学, 芸術学部, 教授 (70405950)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 環境法 / 環境政策 / 狩猟システム / 野生動物保護管理 / コモンズ / 入会権 |
Research Abstract |
23年度において、文献調査については、予定していたものは順調に実施できた。旧狩猟法、狩猟入会地については、明治28年の法制定以前に遡り、明治初年の農林政策の中での狩猟規則等の扱いを研究している。先行研究がないため、非常に独創的かつ有意義であると期待している。人間社会と野生動物の関係については、大震災の影響を受け、人間社会はもちろん、野生動物の側も大きく変わることが予想される。未体験のことであり、文献調査の域を超えるが、共同研究者らと鋭意討議しているところである。コモンズについては、漁業権との比較を重視して文献研究をしている。 現地調査は、3月11日に発生した大震災の影響で、東日本での調査は不可能だった。幸い富山と長野では聞き取り調査等を実施することができた。海外調査は、ドイツバイエルン州で、狩猟者、狩猟団体、行政、研究者などに対してヒアリングや、営林署の協力で有害捕獲の視察など、予想以上の収穫であった。また、漁業権に関する現地調査にも参加した。 研究会実施については、震災の影響で小規模なものとなったが、震災後の放射能の鳥獣や狩猟への影響を議論した。鳥獣を資源として利用する伝統的な狩猟者の行動は大きく変わらざるを得ないことが問題として指摘された。そのうえで、リクリエーション狩猟も含めて、狩猟者の自発的な鳥獣管理への参画は望めなくなるのではないかという考えに収斂した。なお、研究会は1回はマタギサミットとして東北地区の狩猟者を交えて行った。研究組織内の研究会参加は、高橋、田口で2度、高橋、緒方で2度実施した。 このような問題意識のもとに、精力的に関係研究者らと意見交換したり、各種研究会に参加するなどして、24年度以降の研究方向を、放射能問題に対応すべく若干修正することとしたところである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献調査では、狩猟資源(野生生物資源)のコモンズ的管理の歴史と現状が明らかになってきている。またドイツ等諸外国との比較や、国内においても漁業権との比較を、いずれも現地調査も含めて実施されている。 現地調査は震災の影響もあり、東日本では足踏みを余儀なくされたが、富山、長野、ドイツで実施できたし、24年度には遅れを取り戻したい。現地調査では、文献調査以上に狩猟資源が地域で管理されている実態があきらかであった。 研究会は研究組織が一堂に会することはなかったが、代表者高橋を中心に延べ4回、現地調査を含めて議論を重ねた。狩猟という特殊なテーマのため、高橋と分担者田口以外の参加者の知識・認識にばらつきがあるのは否めないが、多くのことを学び、今後さらに議論を深めるプラットフォームが構築された。 最後に、震災を受けて新たに生じた課題にも研究目的の範囲内で、果敢に調整していることをつけ添えて、おおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は文献調査として、継続して旧狩猟法と狩猟入会、野生動物との関係性、コモンズ等の調査を行うほか、JSPS外国人特別研究員として来日予定のGuy Charlton氏を研究協力者に迎えて、アイヌ、北米インディアン、マオリ族など先住民族の狩猟・漁労採集の権利関係ついて調査し、日本の伝統的な権利概念との比較研究を行う。 現地調査は、23年度は震災で実施できなかった東北において実施したい。富山、長野は継続実施する。海外については、当初計画では北米五大湖を考えていたが、ケニアとのいずれかにしたい。ケニアを考慮する理由は、ケニアでは動物保護の観点から哺乳類の狩猟を禁止したが、野生動物保護管理及び鳥獣被害対策上の問題が顕在化しているためである。 研究会は、予定通り6月のマタギサミットに合わせて高橋、田口、連携研究者緒方賢一らで開催し、研究の進捗及び今後の計画を確認したい。また、その他適宜メンバーで実施したい。 上記に加えて、当初計画にはなかったが、放射能汚染と震災の影響を中心に、狩猟者の行動と意識に関するアンケート調査を実施する。福島原発による放射能汚染により、長期にわたりイノシシなどの野生動物が汚染されることが予想される。従来の野生動物管理は狩猟者に依存してきたが、放射能汚染により、狩猟者の狩猟への意欲が大幅に減退し、野生動物保護管理に支障がでることが予想される。よって、その影響をアンケート調査で明らかにするのだが、本研究課題との関連は、現行の狩猟法制では漁業者と異なり狩猟者には放射能汚染に対する損害賠償求償権がない問題などが浮かび上がると予想される。また、アンケートに際しては、猟場の縄張り性などの質問も併せて行う予定である。調査対象は、12都県の約1万人であり、野生度生物保護学会と連携し、地方自治体の協力のもとで行う。実施に当たり、兵庫県技師の上田剛平氏を研究協力者に迎える。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備物品費 書籍200千円、その他(アンケート分析ソフト等)150千円 小計 350千円旅費 国内(調査及び研究会)250千円 海外調査(米国またはケニア)400千円 小計650千円謝金 50千円その他 印刷費(アンケート用紙)100千円、発送費(アンケート)100千円 小計200千円総計 1250千円
|
Research Products
(2 results)