2013 Fiscal Year Research-status Report
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23530132
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
高野 一彦 関西大学, 社会安全学部, 教授 (40553128)
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Keywords | 個人情報保護 / プライバシー / パーソナルデータ / ビックデータ / コンプライアンス / コーポレートガバナンス / 事業継続計画 |
Research Abstract |
2013年5月24日、国会において行政手続番号法が成立し、2014年1月5日、同法に基づく特定個人情報保護委員会が新置され、わが国において「国際的にも通用する強度」と評価されるデータ保護法制を備えることとなった。 本法の成立にあたり本研究は、2011年4月から2012年3月の2年間で15回の研究会を実施し、EU及びアメリカのデータ保護法制に関する研究を行い、その結果を4回の連続公開シンポジウム(そのうち1回は情報ネットワーク法学会との共催実施)で公表し、わが国の情報法制のあるべき姿を提言した。本シンポジウムは内閣官房、経済産業省、総務省、厚生労働省など政府の立法担当官が数多く出席し、行政手続番号法における個人情報保護システムの立法に一定の関与を行うことができた。 2013年度は、同様に5回の研究会(5/18,7/27,9/11,10/5,11/2)、及び2回の公開シンポジウム(9/1,12/23)を実施し、行政手続番号法の上位法である個人情報保護3法の改正に関する議論をすすめた。 また経営倫理士協会(ACBEE)、日本経済団体連合会、日本コーポレートガバナンスネットワークなどの招聘講演に登壇し、現在の情報法制の議論を紹介し、企業の立場からの立法への具体的意見の提言を促した。 さらに、私を含む研究協力者による共著論文を2013年9月に発刊予定であったが、個人情報保護3法の改正議論が進展したことから、2015年2月発刊に延期した。そのため本共著論文に寄稿予定であった論文は、関西大学経済政治研究所の研究叢書に寄稿し、公表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究の目的」は、① 欧米諸国のプライバシー保護法制及び独立監視機関の調査、② 欧米諸国のトレード・シークレット保護法制の調査、③ 欧米諸国の優良企業における情報管理とコンプライアンス体制の調査、及び④ わが国の新たな情報法制の立法提言、および企業の情報法コンプライアンスの提言、の4項目である。 研究費が交付された2011年からの3年間で、わが国の個人情報保護法制が劇的に変化し、2016年通常国会において新たな情報保護法制の定立が予定されることとなったため、2012年8月に行ったカナダ・オンタリオ州PICの調査、これに基づく20回の研究会及び6回の公開シンポジウムによる立法提案によって、①及び④を先行して行った。この2項目に関しては、間接的にせよ、「立法提言」を行い、現行の行政手続番号法及び改正個人情報保護法大綱にその趣旨を反映させることができたと考えられ、当初の研究目的を達成しつつあると評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
「企業保有情報」は、プライバシー・個人情報の法的側面のみならず、トレード・シークレット等の法的側面も有している。企業における情報法コンプライアンスは、本人の権利保護と同時に、企業防衛の観点も織り込み、あるべき姿を探究する必要がある。 本研究は現在、プライバシー・個人情報保護法制の立法提言を行っているが、2014年度はこれに加えて情報の不正取得者への法的制裁、及び企業における内部統制システムの一環としての情報管理(ガバナンス)のあるべき姿を探究する必要がある。 本研究期間である2014年度以降の2年間は、前述の4つの「研究の目的」のうち、トレード・シークレット保護法制の欧米比較研究をすすめて、2015年通常国会に提出される予定の改正個人情報保護法への刑事罰の導入を提言する(②)とともに、現在議論がすすんでいる改正会社法におけるコーポレートガバナンス・内部統制の研究から、経営者としての情報法コンプライアンス体制のあり方を提言する(③)。 本研究項目のうち前者(②)は、研究協力者との共同研究から公開シンポジウムを開催して立法提言を行うとともに、2015年2月に商事法務出版から発刊予定の共著論文で公表する予定である。また後者(③)は、理事を務める日本経営倫理学会、及び日本コーポレートガバナンスネットワークにおける研究活動から会社法改正議論を捕捉し、あるべき情報法コンプライアンス体制の提言を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年5月24日に行政手続番号法が成立し、同年9月2日から政府にパーソナルデータに関する検討会が立ち上がり、個人情報保護3法の改正が議論される中、海外調査を行うよりも国内における議論と立法提言に集中すべきと判断し、海外法制の調査研究のための出張を延期した。 したがって、外国旅費が発生しなかったことが次年度使用額が生じた主要因である。 2014年度も前年同様に国内法制の議論がさらに活発になると予想される。同年6月に改正個人情報保護法の大綱が公表され、パブリックコメントの後、法案が策定され、2015年通常国会に提出される予定である。従って、2014年度も前年同様に、国内における研究会、公開シンポジウム、及び研究協力者との著書出版による立法提言を中心に行い、その後に本格化すると予想される日本版プライバシーコミッショナー制度の設計に向けて、2015年度に海外コミッショナーオフィス及び企業の視察を行う予定である。
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