2014 Fiscal Year Research-status Report
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23530132
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
高野 一彦 関西大学, 社会安全学部, 教授 (40553128)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2017-03-31
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Keywords | 個人情報 / パーソナルデータ / プライバシー / 営業秘密 / コンプライアンス / コーポレートガバナンス / 危機管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は、同年1月には行政手続番号法に基づく「特定個人情報保護委員会」が発足し、同年6月には政府のパーソナルデータに関する制度改正大綱が公表され、2015年3月には改正個人情報保護法が閣議決定され国会に提出された。 本研究は、研究協力者で構成した情報法研究会において行った、EU一般データ保護規則提案、OECD改正プライバシーガイドラインなどの国際ルール、及び欧米諸国のプライバシーコミッショナー制度などの研究から、わが国の行政手続番号法、改正個人情報保護法案へのプライバシー保護制度の提言を行い、多くの提言は立法の際に採用された。 このような状況において、本研究の成果として2014年度は、著書・共著2冊、論文・単著2本(査読無)を発表するとともに、学会・研究会等の研究報告5回(単独)を行った。社会的活動として、企業や団体の招聘講演を11回行い、その成果の普及に努めた。 著書・論文の中でも特に、関西大学社会安全学部編『リスク管理のための社会安全学』所収の拙論「情報危機管理とビッグデータ -わが国の個人情報保護法制への提言と企業コンプライアンス-」(21-46頁)は本研究の集大成として寄稿した。また、2014年10月20日に日経ホールで開催した関西大学 社会安全学部主催 第5回東京シンポジウム「ビッグデータ時代の個人情報-企業価値を高めるデータの利活用とコンプライアンス-」において、「企業における個人情報の利用と保護」をテーマに私の研究成果の報告を行い、企業の実務者を中心とした約350名の参加者に、あるべき情報法コンプライアンスの姿を示し、さらに日本経済新聞2014年11月26日朝刊の採録記事の掲載により普及浸透を図った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
公布申請書に記載した研究の目的は、①欧米諸国のプライバシー保護法制及び独立監視機関の調査、②欧米諸国のトレード・シークレット保護法制の調査、③欧米諸国の優良企業における情報管理とコンプライアンス体制の調査、および④わが国の新たな情報法制の立法提言、及び企業の情報法コンプライアンスの提言、の4項目である。 研究費が公布された2011年からの4年間、わが国の情報法制は劇的に変化した。これは政府が2013年6月14日に公表した「日本再興戦略 -JAPAN is BACK-」において、ビッグデータによるイノベーションなどを通じた次世代産業の創出を成長戦略の主要施策として示したことから①データの利活用と個人情報・プライバシー保護を両立するルールの策定、②監督機関の設置を含む新たな法制度の定立、を主要目的として示したことで、制度改正のスピードがアップしたと考えられる。 本研究は、研究協力者で構成した情報法研究会において、2011年以降に約20回の研究会と6回の公開シンポジウムを通じた立法提案、及び関西大学社会安全学部が主催して日経ホールで行った東京シンポジウム、日経新聞の採録記事及び共著書『リスク管理のための社会安全学』による研究成果報告などを通して、当初の研究目的を達しつつあると評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は本研究における5年計画の最終年となる。本年度の研究目標は、改正個人情報保護法に基づく「個人情報保護委員会」の制度設計と委員会規則の定立に尽力すること、また新たな法制度に基づく情報法コンプライアンス体制を立案し、学会や実務者との研究会を通した普及浸透を図ることである。 第一の目的は、個人情報保護委員会の制度設計のために先進諸国のコミッショナー制度に関する調査研究を行い、その成果を提案するとともに、情報の利活用と保護に関する詳細なルールとしての個人情報保護委員会規則を提案することである。第二の目的は、これらのルールに基づく企業の新たな情報法コンプライアンス体制を提言し、広く社会に普及させるとともに、学術論文として研究協力者とともに著書を発刊し、その成立の過程と課題を公表することである。
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Causes of Carryover |
2014年度は、法改正のまさに渦中であったため、改正個人情報保護法の立法提言と情報法コンプライアンス体制の提言に全精力を使ったため、特に海外出張旅費が未使用として残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2014年度に実施できなかった海外出張による欧州諸国のInformation Commissioner 及びEU本部での調査研究を行い、わが国の個人情報保護委員会の制度設計と委員会規則の定立のための提言を行う予定である。
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