2013 Fiscal Year Annual Research Report
生命倫理における死と自己決定権―臓器摘出の推定同意への比較医事法的アプローチ
Project/Area Number |
23530134
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
大河原 良夫 福岡工業大学, 社会環境学部, 教授 (70341469)
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Keywords | 終末期法 |
Research Abstract |
生命倫理における<死>の二局面としての、生命終期における治療中止と安楽死の問題(終末期法)および移植医療における臓器摘出(提供)(同意推定法)の問題との双方に目配りしつつ研究を進める計画であったが、もっぱら前者から後者により重点を移行させてゆくこととなった。それは、専ら前者が進展を見せていない一方で、後者の進展があまりに顕著であったことによる。最終年度に当たってここに記しておかねばならない。 さて本年度は引き続き、生命終期における治療中止(終末期法制)と、その周辺としての安楽死及びその周辺(特に持続的深いsedationと安楽死の境界)の研究を推進した。フランスにおいては、終末期医療法制の周辺をめぐる議論が風雲急を告げ、安楽死は認めないが、急転直下、幇助自殺を認める方向での最近の動きは急であった。それは、2013年12月シカール報告書に始まり、そこでは、終末期法の不知と適用不徹底、事前指示書、ターミナル・セデーション、積極的安楽死の新法への組込み拒否等が議論されたが、幇助自殺については考慮の余地ありとの立場を表明した。この報告書が終末期論議を再燃させたのである。そして翌年7月国家倫理委員会の答申も出されており、その年度内に新法案提出が日程に上っていた。このような動きは、これまでのフランス法の伝統原理を見直すだけに、丹念に跡づけねばならなかった。ただ、2005年法が、延命治療中止、二重効果的治療の容認を導入したときに、すでに安楽死の一角は崩されていたといえる。終末期や意識がない患者は、同意の限界や免除・省略の法理が働き、それぞれの場合における最善利益の決定、終末期法では、合議決定プロセスの問題に議論の重点は移る。法理論的には、これらの問題は、古典的な問題に対する対応と新たな問題への対応とが含まれる(この点は臓器摘出の場合と同様である)が、このような研究を行なってきた。
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