2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530138
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
村松 惠二 弘前大学, 人文学部, 教授 (00113837)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 右翼的ポピュリズム / 極右 |
Research Abstract |
交付申請書に記載した本研究の目的は、オーストリア自由党を中心的事例として、ヨーロッパにおけるいわゆる「極右」的政治現象を、1980年代以降急速に進行した政治経済のグローバル化と資本主義の原点回帰を歴史的背景として生じた、福祉国家の病理現象として考察し、「極右」イデオロギーの構造と運動発展の心理的メカニズムを明らかにすることであった。 そのために、平成23年度には、「極右」現象を理解するための理論的枠組みを作り上げることに努力を注いだ。とりわけ、「ポピュリズム」について、関係文献を収集し、集中的に分析することによって、ポピュリズム的言説がもつ特徴を明らかにしたいと考えていた。この点では、大きな成果を手にすることができた。その結果を、論説「『右翼的ポピュリズム』概念をめぐって」としてまとめることができた。研究の進展の結果、いわゆる「極右」的政治現象を理解するには、「極右」ではなく、むしろ「右翼的ポピュリズム」概念がより適切なものではないかと考えるようになっている。極右概念が巷間流布している状況を改善できると期待できる。 さらに、この論説をまとめる過程で、イデオロギー論に関して、ポストマルクス主義を含めたポストモダンの流れをくむ理論を集中的に研究できた。交付された補助金を利用して、2011年度政治学会、とくに分科会「政治理論の方法」での議論に接することができたことも、研究を進める上で大いに役立った。 これは、右翼的ポピュリズムのイデオロギーが、新自由主義およびナショナリズムといかなる関係に立つのかを考察するうえでも、新たな視点を提供することと思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の実施計画では、極右現象を理解するための理論的枠組みを作り上げることをめざしていたが、その目的はおおむね達成されたと思われるからである。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、研究実施計画に沿って、オーストリア自由党を中心にそのイデオロギーを分析する。今年の研究から、さらにイデオロギー論として展開する方向も見えてきたので、その方向への発展も展望したい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
交付申請書に記述したとおり、次年度は、オーストリア自由党の理論とイデオロギーを考察する。 まず、オーストリアの政治構造が機能不全に陥って、政治統合が困難になるなかで、自由党が躍進したそのメカニズムを明らかにする。自由党は、2000年2月に連立政権に参加したのち、急速に勢力を後退させつつ分裂したが、その後、急速にその勢力を回復した。この最近の展開をも視野に入れて、党の文献を中心に、古書も含めて、資料の収集を行ない、「極右」運動の発展と後退の姿を解明し、その原因を究明する。 こうした背景の理解に立って、オーストリア自由党の理論とイデオロギーを考察する。党の文書の検討をはじめとして、最重要人物であるJ・ハイダー元党首(2008年10月に交通事故死)、彼の顧問でもあった「極右」理論家A・メルツァーなどの思想を中心に分析する。その際、いわゆる「極右」のイデオロギーの核心に社会ダーウィニズムがあり、その底にはニヒリズムが流れているのではないかという仮説が論証できるか否かを重視しつつ、分析する。 物品費を用いて、彼らの著書を中心に、党の文献も含め、関連文献を収集する。今年度は政治学会が九州大学であるので、旅費を用いて、昨年果たせなかった九州地区の研究者から情報を得つつ、意見を交わすことを予定している。
|
Research Products
(1 results)