2013 Fiscal Year Annual Research Report
民主主義は暴力を克服できるか-インドにおける州間比較分析-
Project/Area Number |
23530143
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中溝 和弥 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (90596793)
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Keywords | 政治学 / インド / 暴力 / 民主主義 |
Research Abstract |
平成25年度は、ビハール州とグジャラート州において、宗教対立を煽る政治勢力に対する支持動向を調査した。学会・国際会議では、「暴力と市民社会」(アジア政経学会)と題する発表を行い、「現代インド地域研究」と共催した国際会議では、“Secularism and Federal Space”と題する発表を行った。同会議には、宗教暴動研究で世界的に著名なイェール大学のスティーブン・ウィルキンソン教授を招聘し、暴力と民主主義の関係に関する議論を行った。 論文は、“Political Change in the Bihar”、「危機の政治史」を公刊し、インド政治史のなかで危機としての暴力が政治過程に及ぼした影響を考察した。松里公孝氏と共同執筆した「民族領域連邦制の盛衰」においては、民族が共存する制度設計について、インド、中国、ロシアとの比較分析を行った。 3年間に及ぶ本プロジェクトの目的は、暴力を克服する政治体制としての民主主義の可能性を、インドの三州の比較を通じ検証することにあった。検証の結果、ビハール州では宗教対立を防ぐ政治が民主制を通じて実現される一方、グジャラート州においては、少数派のムスリムに対する抑圧が様々に存在することがわかった。アーンドラ・プラデーシュ州においては、国家によるナクサライト勢力の弾圧により表面的には暴力的対立は収束したものの、経済的不況など一定の条件が整えば、再び暴力的対立が起こる可能性が明らかになった。 研究によって判明したのは、経済自由化に伴う貧困・格差の拡大が、重要な要因の一つとなることである。貧困・格差拡大のメカニズムをより深く分析するために、平成26年度から開始された科研プロジェクト「民主主義は貧困と格差を解決できるか―インドにおける州間比較分析―」において、今後も暴力的対立の要因について研究を継続していく予定である。
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