2013 Fiscal Year Annual Research Report
初期近代イギリスにおける実践哲学の形成―政治的賢慮概念をめぐって―
Project/Area Number |
23530145
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岸本 広司 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (20186216)
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Keywords | 初期近代イギリス / 政治思想史 / 実践哲学 / 政治的賢慮 / ウィリアム・テンプル / ハリファクス侯 |
Research Abstract |
本研究は、初期近代イギリスにおける実践哲学の形成を明らかにすることを目的としている。研究実施計画の最終年度である平成25年度は、前年度に引き続いて、W・テンプルの実践哲学を解明するために彼の思想形成を考察した。具体的には、テンプルの人間形成や思想形成に影響を及ぼしたドロシー・オズボーンに着目し、テンプルとドロシーが知り合った経緯、英文学史上有名なドロシーのテンプル宛書簡等を、当時の政治的・社会的背景を踏まえながら論究した。研究成果の一部は、「ウィリアム・テンプルとドロシー・オズボーン」(『岡山大学大学院教育学研究科研究集録』第153号)として公表した。 次いで、ハリファクス侯とR・ハーリの政治思想を分析した。彼らの議会演説、書簡や日記などの私文書、The Character of a Trimmer,1688; The Anatomy of an Equivalent,1688; Maxims of State,1693; Plain English to all who are Honest,1708 などの政治パンフレットを読解しながら、彼らの政治理念にも賢慮概念が豊かに包蔵されていることを解明した。とりわけ注目したのは、ハリファクスにおける「日和見主義」の思想である。この場合の日和見主義とは、原理を欠いてその時々の状況や雰囲気に流される、いわゆるオポチュニズムではない。むしろ、宗教的・政治的対立が激化する中で、熱狂と極端に走ることを戒めつつ、あえて中道の道をとろうとするものであり、それ自体、理念に基づいた政治的賢慮念のひとつの表現であった。研究者は、ハリファクスの賢慮概念の分析を通してこのことを明らかにした。そしてテンプルやハリファクスの実践哲学が、18世紀のE・バークたちにどのように継承されていったかをイギリス政治思想史のパースペクティヴの中で追究した。
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Research Products
(1 results)