2011 Fiscal Year Research-status Report
日本官僚制におけるノンキャリアの専門教育を通じた選抜と人的ネットワークの研究
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23530146
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
築島 尚 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (60275005)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 政治学 / 行政学 / 官僚 / 集団 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本官僚制で自律性が維持される一因として、キャリア官僚に見られる同期関係や先輩・後輩関係と同様に、ノンキャリアも研修機関における専門教育を通じて強固な人的ネットワークを形成しているのことを明らかにするところにある。 本年度の実績として、まず、ノンキャリアとの対比で必要となるキャリア官僚に関して後掲「13.研究発表」の論文で、約40人に上る官僚の個人経歴を収集していくつかの昇進類型を立て、厚生省でキャリア官僚は、早めに選抜され、その人事方針を後付けするかたちで職位を得ながら、先輩・後輩関係のもとで仕事をともにすることで、年次を越えた人的ネットワークを強化していることを実証的に示した。 また、自治大学校については実際に訪問して『校友だより』という未公開の同窓会紙を閲覧し、また、税務大学校については『税務大学校40年の歩み』及び『税大教育50年のあゆみ』等の非売品と思われる資料を入手し、両校の回想記を読んだところ、本来は職務に必要な知識・技術の伝授を目的とするに過ぎないはずの研修機関で研修生は、寮生活や各種リクリエーション活動等を通して、一般の学校の同期生がもつのと同様の横のつながりを強めていることが明らかになった。さらに、自治体職員という省庁外の者の研修を主な目的とする自治大学校と異なり、税務大学校においては、厳格な規律のある寮生活が営まれ、ノンキャリア研修生同士の先輩・後輩関係、ノンキャリアの教育官ら教員と研修生との師弟関係、教員内にある上下間関係という縦の関係が何重にも醸成され、それが、その後職場における上司・部下関係に移行したときに強い結束力と規律を生み出しているとの知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画にある大学校に関する制度と歴史を知るために『自治大学校五十年の歩み』、『税大教育50年のあゆみ』といった基礎資料を揃えた。研修内容については、管理職を対象とした教育内容を記した内部資料や教員用の指導教則本を入手することはできなかったが、上記基礎資料及び同窓会紙には、大学校責任者、部外講師、教員、研修生の回想記が掲載されており、上記「9.研究実績の概要」に述べた知見を得るに足る資料となった。また、研修生と教官の選抜については、個人情報保護の流れを受けて修了者名簿などの入手が難しいなか、幹部の経歴が詳細に記載された『大蔵省名鑑』に税務大学校における教員経験者の経歴を多数確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
大学校の内部資料の調達はこれ以上困難と思われるが、すでに入手した回想記及び一部教員経験者の詳細な経歴から、自治大学校と対比しながら税務大学校を中心に「9.研究実績の概要」で示した研究成果を次年度に論文にまとめる予定である。また、申請当初の予定通り、研修機関を国際比較するために、次年度以降、アメリカの大学、ドイツの公務員研修制度について順次研究調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用予定の研究費が生じたのは主に、当初3回予定していた2泊3日の東京出張を、時間を工面して節約し6泊7日の1回にまとめたためである。ただ、次年度計画にある10日間の渡米費用は燃油サーチャージの高騰もあり、当初予定の20万円では大きく不足することが予想されるので、繰り越される研究費をその費用に充てたい。
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