2014 Fiscal Year Annual Research Report
日本官僚制におけるノンキャリアの専門教育を通じた選抜と人的ネットワークの研究
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23530146
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
築島 尚 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (60275005)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 政治学 / 行政学 / 官僚 / 集団 / 専門教育 / 専門性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は本研究の最終年度として、これまでの日本の大学校に関する成果を論文にまとめるとともに、日本の大学校との比較のためにドイツにおける研修機関の専門教育について調査した。 まず、日本の大学校全般の現状を確認した上、国税庁の職員研修機関である税務大学校を取り上げ、50年史を用いて創設から1991年までの同校普通科のカリキュラムを点検したところ、各種税法科目や簿記・会計を含む専門科目の授業時間数は、創設期の一時期を除いてカリキュラム全体の5割を超えることはなく、低減傾向にあり、最終的には3割にも満たなくなることを見出した。となれば、税務大学校は、専門教育をさほど行わない専門教育機関といえる。その原因を求めて同校の歴史を振り返ると、創設期に本格的な専門教育機関とする努力はなされたが、戦中戦後の混乱により成功せず、また、時代とともに徐々に人材採用がうまく行かず、結局、税務の知識や技術は、職場内研修として部門ごとに先輩・後輩関係の下で習得されることとなり、同校では、それを支える集団性・団結力といった人間形成に力点を置くことになったとの結論に達した(別掲論文を参照。) また、ドイツの税務教育について、行政関係の資料が豊富なシュパイヤー行政大学院で調査したところ、日本の税務大学校では、実務の第一線を担う者に長期研修を行うが、ドイツの連邦財務アカデミーという連邦財務省の附属機関では、高級公務員を中心に短中期の研修を行っていることがわかった。まだ仮説ではあるが、これは、専門性が職場内で細分化されて官僚制組織の末端によって伝承されている日本と異なり、ドイツでは、税務行政を統一し、管理職が特定分野の専門性を備えながら部下を統率するという、専門性と上下関係の一致があるものと思われる。他方、日本では、この一致がないために、上司による部下の統率が人事統制に偏りがちになるのであろうとの知見を得た。
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