• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2013 Fiscal Year Research-status Report

16世紀スペインにおける恩寵と自由意志―「もう一つの社会契約説」の展開

Research Project

Project/Area Number 23530152
Research InstitutionUniversity of Shizuoka

Principal Investigator

松森 奈津子  静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (80337873)

Keywordsサラマンカ学派 / バロック / 抵抗 / 啓蒙 / ビトリア / スアレス / モリナ / マリアナ
Research Abstract

本研究は、16世紀スペインにおける後期サラマンカ学派の政治理論に着目することによって、国家理性論や社会契約説に偏った従来の西洋初期近代理解を修正するという全体構想の一部である。具体的には、政治的諸問題が論じられる際の基盤となっていた恩寵(神の意志)と自由意志(人間の意志)の関係をめぐる諸議論を検討する。その目的は、第一に、恩寵論争と忠誠宣誓論争を主軸として展開された16世紀後半期スペインの世俗権力論の全体像を明らかにすること、第二に、社会契約説に代表される同時代の主流理論との異同を考察することにより、その地位と意義を模索することである。
この二つの目的を達成するため、今年度は、第二の分析軸となる忠誠宣誓論争に関連する諸議論を考察した。まず、後期サラマンカ学派を中心とする思想家たちのテクストの底本と先行研究を調査・確定し、その読解と解釈に努めた。ついで、抵抗と服従をめぐる思想系譜に位置づけながら、かれらの理論の特質と意義を検討した。
具体的には、後期サラマンカ学派が多大な影響を受けている前期サラマンカ学派との異同を明確にするため、あらためてビトリアに代表される16世紀前半期の理論的特質を英語の二論文としてまとめた。また、これを批判的に継承した16世紀後半期の理論展開について、口頭報告一編、共著論文二編の形で公にした。 以上により、モリナとスアレスを中心とする後期サラマンカ学派イエズス会派の権力論、国家論の特質が明らかにされ、かれらがマリアナやベラルミーノといった周辺のイエズス会士とともに、ジェイムズI世をはじめとする王権神授説にどのように対抗したか、またそれが啓蒙期を中心とする後世にどのように受け継がれたか、が検討された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

交付申請書の計画では、今年度は忠誠宣誓論争に関する資料収集と底本確定のみを行う予定であった。けれども結果的には、来年度以降に行うことになっていた口頭報告、論文執筆まで進めることができた。
したがって本研究は、当初の計画以上に進展していると考えられる。

Strategy for Future Research Activity

平成26年度については、当初は平成25年度に収集・読解した資料に基づき、忠誠宣誓論争に関連する諸議論についての草稿を執筆する予定であったが、予定していた大部分をすでにまとめることができた。したがって、当初予定よりもさらに一歩進め、サラマンカ学派の秩序構想を国際法秩序形成の系譜というより広い視野に位置づけて再検討することを予定している。この部分を補足することによって、今年度に行った考察をさらに深化させることができると思われる。
平成27年度については、当初予定通り、恩寵論争と忠誠宣誓論争という二つの分析軸を統合した最終成果発表を行う予定である。分析の中心となるのは、王権を恩寵によって神から直接授けられたものとみなすジェイムズI世の論理と、王権に正当性を与えるのは人々の自由な合意だとするスアレス、ベラルミーノの論理である。かれらの論理を、中世から近代に至る国家論の変遷という文脈に位置づけ、その意義を提示する。主な対照相手となるのは、中世思想を代表するアウグスティヌス、トマス、アゾ、カイェタヌス、シルヴェストリと、近代思想を構築したマキアヴェッリ、ボダン、グロティウス、ホッブズ、ロック、スピノザである。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

今年度の研究費残額878,633円は、3月までに購入した書籍等の中で検収、クレジットカード明細などの手続き書類が年度内期限までに間に合わないものがあったこと、絶版の貴重書が入手できなかったこと、年度末に公刊された2冊の共著書の献本代の執行手続き書類が年度内期限までに未着であったこと、によって生じたものである。この残額は翌26年度に繰越し、執行手続きを終えていなかったものについては執行するとともに、ひきつづき絶版書籍の入手ルートを探す予定である。
平成26年度研究費に配分される予定の800,000円は、当初計画通り、資料調査、収集、解釈のために使用する。まず、国内外の図書館等で一次資料の収集作業を行うため、渡航・滞在費と資料閲覧・複写費が不可欠の経費となる。さらに、現地で参照するテクスト以外の一次・二次資料を収集するための図書購入費、借受料(図書館相互貸借・複写依頼制度)、旅費(相互貸借・複写不可の国内稀少資料)を要する。

  • Research Products

    (5 results)

All 2014 2013 Other

All Journal Article (2 results) Presentation (1 results) (of which Invited: 1 results) Book (2 results)

  • [Journal Article] Reason and Prudence: A Study of the Discussions on the Nature of 'Indians' in Sixteenth-Century Spain (III)2014

    • Author(s)
      Natsuko Matsumori
    • Journal Title

      Journal of International Relations and Comparative Culture

      Volume: Vol. 12, No. 2 Pages: 149-159

  • [Journal Article] Reason and Prudence: A Study of the Discussions on the Nature of 'Indians' in Sixteenth-Century Spain (II)2013

    • Author(s)
      Natsuko Matsumori
    • Journal Title

      Journal of International Relations and Comparative Culture

      Volume: Vol. 12, No. 1 Pages: 119-128

  • [Presentation] スペイン啓蒙とその前史ーーサラマンカ学派イエズス会派を中心に

    • Author(s)
      松森奈津子
    • Organizer
      東北大学政治学研究会
    • Place of Presentation
      東北大学
    • Invited
  • [Book] 岩波講座政治哲学(1)2014

    • Author(s)
      川出良枝編
    • Total Pages
      240
    • Publisher
      岩波書店
  • [Book] 野蛮と啓蒙--経済思想史からの接近2014

    • Author(s)
      田中秀夫編
    • Total Pages
      694
    • Publisher
      京都大学学術出版会

URL: 

Published: 2015-05-28  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi