2011 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ沖合石油・天然ガス田の新規掘削モラトリアムの歴史研究
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23530158
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Research Institution | Keiai University |
Principal Investigator |
櫛田 久代 敬愛大学, 国際学部, 教授 (10281776)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 |
Research Abstract |
レーガン政権からオバマ政権までを研究対象として、新規沖合石油・天然ガス田開発モラトリアム措置をめぐる政治過程の全体像を把握するという研究目的を達成するために、当初の計画通り、初年度、[課題1]連邦政府の沖合資源新規開発モラトリアム政策への対応の観点から見た州の比較研究と、[課題2]2010年4月に発生したメキシコ湾における原油流出事故も含め、原油流出事故とその後の歴代政権の対応比較に関する資料収集を行った。2011年9月、現地調査で訪れたルイジアナ州では、チューレーン大学図書館を拠点として、主に、現地の新聞記事データベースを通して地域経済、政治の現状について調査できた。 また、メキシコ湾原油流出事故後、バラク・オバマ大統領が組織したBPディープウォーター・ホライズン原油流出および沖合掘削に関する連邦委員会の調査報告書(2011年)は、モラトリアム政策を含めて、アメリカ合衆国の沖合石油・天然ガス田開発の歴史を政治的、経済的、法的立場から概観しており、当研究にとってかなり重要な研究指針となりうることがわかった。 一方で、連邦・州レベルの業界団体、利益団体アクターの動向に関する資料収集の一環で、天然資源保護協議会の事務局長を務めるピーター・レイナーの活動に注目した。レイナーの著作に関しては、初年度調査の一つの成果として、「書評 Peter Lehner 著 In Deepwater: The Anatomy of a Disaster, the Fate of the Gulf, and Ending Our Oil Addiction」『総合地域研究』第2号(2012年4月発行予定)、80-82ページ、として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
[平成23年度] に予定したのは、(1)モラトリアム政策関係と(2) 原油流出事故とエネルギー環境政策関係についての政府関係資料および先行研究の収集であった。いずれも、次の4つの柱――(1)連邦議会のモラトリアム提出・解除の動きに関する資料収集(政府関係文書、先行研究)(2)州知事および州議会の動向に関する資料収集(政府関係文書、先行研究)(3)連邦・州レベルの業界団体、利益団体アクターの動向に関する資料収集(4)ルイジアナ州、フロリダ州における現地での資料収集――で進めてきた。 先行研究に関しては、BPディープウォーター・ホライズン事故後1年が経ったことで、本研究にとっても有益な本格的な学術研究が公表され始めており、先行研究リストが続々と増えている。そのため、本研究に必要な学術書の購入には力を入れてきた。また、政府関係資料に関しては、連邦政府関係は集まりつつあるが、一方で、(2)の州政治関係の資料収集が遅れているのが現状である。理由は、連邦政府関係の資料収集を中心に行ったため、州政府県警の資料にまで調査が及ばなかったためである。とはいえ、現地点では、連邦政府関係の資料収集を通して、連邦、州、業界団体、公益団体に関して本研究に必要な資料項目の見当を付けつつあり、 [平成24年度]の研究のための土台作りには支障はないといってよい。 また、(4)ルイジアナ州、フロリダ州における現地での資料収集であるが、初年度はメキシコ湾岸州としてルイジアナ州で現地調査を行った。夏期休暇の関係で、研究計画通り、2州における現地調査を実施できなかった。現地に行くことで入手できる様々な情報があることを考えれば、この点は、初年度の反省点の一つである。
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Strategy for Future Research Activity |
[平成24年度]は、研究計画通り、先行研究・資料の整理および分析を行う予定である。計画では、各州の動向を踏まえ、レーガン政権からオバマ政権に至る大統領令および連邦議会の立法措置による新規沖合資源開発に対するモラトリアム政策を歴史的に概観し、分権的な政治制度の中で、モラトリアム措置がこれほど長期にわたって存続してきた背景について分析を行うことで、アメリカにおけるエネルギー環境政策の連邦政府と州政府間の相互作用を考察する。また、州レベルでは、カリフォルニア州、アラスカ州、ルイジアナ州、フロリダ州を対象に、州間および州内におけるエネルギー環境政策への対応の違いを歴史的かつ実証的に分析することを予定している。 また、資料整理と同時に、現地調査が必要な際には、現地での追加資料収集を実施する予定である。この場合、初年度に訪問したルイジアナ州ではなく、フロリダ州あるいはカリフォルニア州における資料収集を実施できればと考えている。また、研究計画では、必要に応じて、アラスカ州における調査も検討していたが、初年度の調査の結果、本研究にとっては、アラスカ州における現地調査の必要性が低いという結論をえた。いずれにせよ、夏期休暇を利用して、現地における追加資料収集を実施することを考えている。 最後に、研究2年目に入り、3年目の成果発表を視野において、順次、研究会での発表や学会投稿への準備も進めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は物品費150,000円、旅費200,000円、人件費・謝礼5,000円、その他45,000円の計40万円の研究費使用を予定しており、当初計画では[設備備品費]として、主にアメリカ政治関係図書の購入費を、また、[旅費]は、[外国旅費]としてアメリカにおける研究調査費、そして、[その他]としては、購入プリンターのトナーカートリッジ、資料整理のための文房具を計上した。 昨年度、アメリカ滞在(12日間)にかかった旅費として29万円であったことを考えると、 [外国旅費] の使用に関しては、約1週間の行程でフロリダ州あるいはカリフォルニア州のどちらか1州に絞っての現地調査が妥当であると思われる。もし2州で現地調査を行うことになれば、[設備備品費]や[人件費・謝礼]に計上している研究費を[外国旅費]に振り分けることも考えたい。 なお、[人件費・謝礼]に関しては、初年度英語校閲費を計上していたが、使用することがなかった。今年度英語論文の準備をする際には使用する可能性がある項目であるが、現時点の研究状況から見て、この費用を[外国旅費]に振り分ける可能性は高い。 [設備備品費] [外国旅費] [人件費・謝礼]の研究費の振り分け以外は、大きな変更なく、研究費を使用する予定である。
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