2012 Fiscal Year Research-status Report
近代中国における社会の武装化と中国共産党の武装闘争ー中央革命根拠地の事例分析
Project/Area Number |
23530159
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
阿南 友亮 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (50365003)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 真 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (20316681)
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Keywords | 国際研究者交流 / 中国 / 米国 / 台湾 / 中国近代政治史 / 中国革命 / 中国軍事史 |
Research Abstract |
平成24年度は、日中関係の悪化により江西省・福建省の档案館での史料収集が中止を余儀なくされた。しかし、このようなトラブルへの対応策は研究計画に織り込み済みであり、その対応策、即ち、米国と台湾における史料収集は、滞りなく実施され、重要な成果を挙げた。その一つが共産党の中央根拠地に対する国民党軍の掃討作戦を指揮した陳誠が収集した共産党の内部文書などからなる陳誠文庫のマイクロフィルム22巻である。マイクロ化された陳誠文庫は、約半世紀前に慶應大学が米国のフーバー研究所から一度入手していたが、経年劣化によって使用不可能となった。今回、そうした事情をフーバー側に説明した結果、研究代表者である阿南が所属する東北大学に新たに陳誠文庫のマイクロフィルムが提供された。この貴重な資料は、本研究グループの研究のみならず今後の日本における中国近代政治史研究にも寄与することが期待される。 一方、分担者の山本は、台湾の国史館、政治大学、東呉大学、台湾大学、衛理神学研究院において1930年代、40年代の中国福建社会に関わる資料の調査をおこない、国民党側の福建における統治、動員、兵站などに関する貴重な資料を多数入手した。また、協力者の岩谷は、台湾の国史館、法務部調査局、中央研究院近代史研究所郭廷以図書館において、中国国民党による対共産党政策に関する文書、報告を調査、閲覧、収集した。その結果、これまで不明であった1930年代、40年代の共産党の秘密指示、ならびにそれに対する国民党の対共対策などが判明した。岩谷は、米国のスタンフォード大学ならびにフーバー研究所でも国民党関連の資料の調査をおこなった。 各メンバーは、以上のような資料調査と並行する形で調査結果を論文にまとめる作業を進めた。また、平成25年度に学会(アジア政経学会)においてメンバー全員が参加する形で研究成果を発表するための準備にも着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、初年度(平成23年度)で準備を進めた中国国内の档案館(公文書館)での調査を実施する予定であった。ところが、尖閣諸島をめぐって日中関係が著しく悪化したことにより、江西省、福建省の档案館での資料調査は中止を余儀なくされた。こうした事態は、交付申請書を作成した段階で既に発生し得ると予想されていたことであり、対応策として台湾と米国に保管されている資料の収集ならびに市場に出回っている両档案館の資料集の入手を想定していた。 現時点でこの2つの対応策は、順調に進展している。具体的にいえば、「研究実績の概要」でも述べたように、台湾・米国において貴重な資料を多数入手するとともに江西省、湖南省の档案館がそれぞれ発行した資料集:『革命歴史文献彙集』も確保し、目下、それらの資料の分析を進めている。『革命歴史文献彙集』は、档案館に保管されている内部文書を修正せずに掲載していることが既に確認されている。したがって、共産党の内部文書を駆使して中国社会の武装化と共産党の武装闘争との相関関係を明らかにするという本プロジェクトの研究目的は、予定どおり達成される見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究作業は、これまで収集した資料の分析を進め、その結果を論文および学会報告にまとめる点に重点を置く予定である。学会報告は、秋にアジア政経学会の分科会を企画するという形でおこなう予定であり、その準備の一環としてメンバー間で3回程度会合を開き、具体的な内容について協議することを計画している。 平成24年度は、日中関係の悪化により江西省・福建省での現地調査を見合わせたが、平成25年度には、現地調査を極力おこなう予定である。档案館での調査が可能かどうかに関しては、改めて先方に打診する必要があるが、例え、档案館での調査が認められなくても、現地の図書館や博物館には希少価値の高い資料が保管されている可能性が高いので、現地調査をおこなう価値は充分あると判断される。現地調査の成果は、なるべく学会報告に反映させたいと考えているので、8月か9月におこなう方向で調整を進めている。現地調査は、一度だけでは不充分である可能性が高いので、2月あるいは3月に再度おこなうことも検討している。その場合、2度目の現地調査の成果は、論文において発表することになる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、日中関係の悪化に鑑み、中国での現地調査を見合わせたために、研究費が約50万円ほど使用されないまま次年度に持ち越されることとなった。平成25年度は、この研究費を活用して極力2回現地調査を実施したいと考えている。また、学会報告の準備を目的とした会合を開催する際の交通費などにも充てる予定である。
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Research Products
(1 results)