2011 Fiscal Year Research-status Report
韓国政官関係の比較研究-大統領・政治任用官僚・職業公務員関係はいかに規定されるか
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23530160
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
磯崎 典世 学習院大学, 法学部, 教授 (30272470)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 政治学 / 比較政治 / 韓国 / 政官関係 / 民主化 / 公務員制度 / 政権交代 / 官僚制度 |
Research Abstract |
初年度の研究実績は、以下の通りである。 第一に、研究対象となる韓国の官僚組織に関する基礎資料、比較対象として扱うアメリカの政治任用と官僚組織および日本の公務員制度に関する基礎資料を収集し、それらの検討に着手した。韓国に関しては、民主化後の省庁再編に相当する改革や公務員制度改革など官僚制度の改編を整理し、基本的な知識が不足しているアメリカの官僚制度に関しては、The Oxford Handbook of American Bureaucracy 所収論文などを、韓国との比較を念頭において検討するところから開始した。日本に関しては、公務員制度改革関係の文献を中心に検討した。 第二に、政策領域間の比較の事例検証の準備を進めた。初年度は、社会保障政策、労働政策、経済政策を中心に、資料を収集・整理し、検討を行った。その過程で、大統領-官僚関係を規定するものとして、大統領と所属政党の関係や大統領と議会の関係、さらには選挙時期との関係などを検討することが重要だと認識し、そのためのデータ収集・整理にも着手した。 第三に、選挙管理委員会研究に関する研究成果である。これは、民主化後に官僚組織が権限を拡大した事例として、研究を重ねてきたものであるが、研究の結果、民主化後に政党間の対立が激化する中で、既存の選挙制度や既成政党への有権者の不信を背景に、選挙管理委員会が中立性と専門性を根拠に権限を拡大してきたことなどが明らかになった。今年度は、その研究成果を共著論文としてまとめて公表した。選挙管理委員会は、選挙政策を担当し、政治家の政治活動を直接規制する「特殊な」行政機関であるため、その特徴をそのまま官僚組織全体のものとして一般化することはできないが、ここで明らかになった点を念頭に、次年度以降の研究を進めることは有意義であり、初年度の研究成果として強調することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3月の東日本大震災の影響で、研究環境の整備や海外でのインタビュー調査実施に関して、いくつか不確実な要素が生じたため、韓国における調査予定を縮小する形に変更し、インタビュー調査などは次年度に回すこととした。そのため、今年度の研究は文献資料の収集・整理・検討が中心となったが、計画時にある程度懸念していたように、在韓米軍再編問題など安全保障関係の資料に関してはアクセスに困難をきたし、時間を費やしたものの大きな成果はなかった。 以上のような理由から、当初の計画よりも少々遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究をふまえ、以下のような推進方策を実施する。 第一に、今年度の研究で、大統領-官僚関係を規定するものとして、大統領と所属政党の関係や大統領と議会の関係、さらには選挙時期との関係などを検討することが重要だとの認識に至ったため、この観点から資料の整理を行う。さらに、2012年は、4月の総選挙・12月の大統領選挙が予定されているが、5年周期の大統領選挙と4年周期の総選挙が同年に実施されるのは20年に一度のことであり、この過程は貴重な事例となる。再任が禁止されている任期末の大統領が、政党間対立が激化する選挙の年に、どのようなガバナンスを発揮するのかに焦点をあて、選挙における政策の争点化や選挙結果が大統領-官僚関係に及ぼす影響を解明する。 第二に、引き続き、安全保障政策分野の資料収集に努力するものの、経済政策、労働政策、社会保障政策など、資料の入手可能な分野で、適切な事例を選択することに重点を移す。また、年度の後半に、社会経済政策分野の事例に関して学会報告を行い、それまでの研究の成果に関してレビューを受ける。 第三に、延期しているインタビューを実施して、仮説の検証や資料収集に関するアドバイスを求める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記のように、今年度に予定していたインタビューを次年度に延期する変更を行ったため、研究費の使用にも変更が生じた。研究の初期段階で大量の資料を購入するよりも、一度収集した文献資料の整理・検討をした後、インタビューによって必要だと判断される資料を追加収集・購入する方が研究の推進には適切であると判断し、初年度に使用を予定していた研究費を、インタビューの実施を次年度に回すこととしためである。よって、次年度はその繰り越し分も含めて研究費を使用することとなる。 次年度は、4月の総選挙および12月の大統領選挙の調査、夏期休暇中のインタビュー調査、インタビューでのアドバイスに基づく資料収集など、4~5回の韓国現地調査を予定しているため、旅費の比重を高く想定している。 物品費は、資料費が中心となると見込んでいる。しかし、韓国のデータベースを活用するために新たな機器の導入が必要となる可能性もあり、それに関しては韓国の専門家のアドバイスを受けながら検討を進める。 また、大統領-議会関係の基本資料データベース作成のため、作業をするアルバイトに対する人件費の使用を考えている。しかし、韓国語の資料をデータ化できるアルバイトを確保できるのか不透明であるため、確保できなかった場合、人件費の使用は少なくなる。その場合、自分ですべて作業するのは手間暇がかかるため、活用できるデータの購入も検討する。
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Research Products
(2 results)