2012 Fiscal Year Research-status Report
韓国政官関係の比較研究-大統領・政治任用官僚・職業公務員関係はいかに規定されるか
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23530160
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
磯崎 典世 学習院大学, 法学部, 教授 (30272470)
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Keywords | 政治学 / 比較政治 / 韓国 / 政官関係 / 民主化 / 公務員制度 / 政権交代 / グローバル化 |
Research Abstract |
本研究は、政治任用と日本型公務員制度が併存する韓国官僚制に着目し、その政官関係を比較制度的に位置づけ、大統領-官僚関係に焦点をあてて政策過程を比較分析することで、韓国の政官関係を規定する要因を解明することを目的にしている。 昨年度の研究で、大統領-官僚関係を規定する要因として、大統領と所属政党の関係、大統領-議会関係、さらには選挙時期などが重要だとの結論に至り、それをうけて今年度の研究を展開した。具体的な実績は、以下の通りである。 第一に、2012年は、4年周期の総選挙と5年周期の大統領選挙が同じ年に実施される20年に一度の年であったため、その機会を捉えた調査を実施した。再選が禁止されている大統領がどのようなガバナンスを発揮するのか、選挙における政策の争点化や選挙結果そして政権移行の過程が、大統領-官僚関係にどんな影響を及ぼすのかという点の解明を重視した。調査の過程で、官僚機構が大統領や政党から自立した動きを見せる注目すべき現象も確認され、成果の一部は下記の学会報告に反映された。 第二に、前年度に引き続き、経済政策、労働政策、社会保障政策の領域で、政策過程の比較を念頭に事例研究を進めた。通貨危機後の構造調整を経て、近年では新自由主義的な経済政策の弊害が社会問題化しているが、これらの政策の方針は短期間に目まぐるしく変化している。研究では、社会経済政策が大きな振幅で変化する背景には、大統領、政党、官僚、社会団体などの力関係の変化があるとの仮説をたて、その検証を試みた。その成果の一部を、日本政治学会研究大会で報告した(「韓国-グローバル化への対応をめぐる国内政治-」)。 第三に、民主化後に官僚組織が権限を拡大した事例である選挙管理委員会に関する研究成果を、書籍の一部として刊行した。中立性と専門性を根拠に権限を拡大してきた選挙管理委員会の実証研究は、本研究の成果の一部である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度はインタビュー調査を実施する計画であったが、2つの大きな国政選挙が予定・実施された年であったため、この研究テーマに関するインタビューに応じてくれる対象者を、確保することが困難となった。私自身も、重要な選挙が相次いで実施される機会に即した研究を行いたいと考え、当初の計画とは異なった調査を行った。それゆえ結果的に、予定に比べて進展が遅れることとなった。しかしながら、研究目的の達成という面では、当初の計画を変更する形で進展していることは付記しておきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2013年度は、以下のような推進方策で、引き続き調査を進めると同時に、これまでの研究を総括して、韓国の政官関係を規定する要因を解明するという研究目的の達成をめざす。 第一に、大統領-議会関係の基本資料データベース、民主化後の政治任用ポストデータベースを作成し、仮説をデータによって裏付けることを目指す。これまでの研究は質的分析を中心に行ってきたが、それをより実証的に検証するため、量的データを整理・活用する。 第二に、仮説の実証・再検討作業のために、インタビュー調査を実施する。これまで文献資料を中心に行ってきた研究を、別の側面から裏付けるための調査である。これまでの研究で、大統領-官僚関係の変化を、大統領と所属政党の関係、大統領と議会の関係、選挙時期との関係などの要因によって説明する仮説を設定するに至っているが、他方で、政策領域による大統領-官僚関係の差異が発見され、それらをいかに捉えるかという問題が重要となる。この点を重視して、インタビュー調査を設計する。 第三に、李明博政権から朴槿恵政権への政権移行にともなう人事異動に関するデータを収集・整理し、政権移行期における大統領-官僚関係の再編についても検討を進める。2012年4月の総選挙から12月の大統領選までの時期、選挙で朴槿恵が当選してから翌年2月に就任するまでの政権移行期、朴槿恵政権初期という時期区分を設定して、その間の大統領による官僚掌握について調査を進める。 第四に、事例研究をもとに大統領-官僚関係の変化を比較し、その関係を規定する要因を明らかにする。世論や市民団体・社会団体からの圧力を背景に、議会や政党など他のアクターとの関係が変化する中で、政官関係がいかに規定されるのか、その過程を比較分析する。 第五に、韓国の政官関係の特徴を日米と比較して検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、インタビューを実施した後に、アドバイスなどを参考にして資料を購入する予定で使用計画をたてていたが、上記のような理由で、予定していたインタビューが実施できなかったため、そのために確保していた費用を使用することができなかった。それに加えて、インタビューの代わりに実施した選挙過程の調査においては、そこですぐに購入できる資料が限られて支出が抑えられたことや、今年度は学会及びシンポジウムでの発表のため、昨年度までに収集した資料をもとに研究を進める作業が中心となったことなどにより、次年度に繰り越す金額が大きくなった。繰越金は、次年度の請求額と合わせて使用する。 研究の最終年度である次年度は、インタビューを実施し、そこでのアドバイスに基づいて資料収集を行うため、旅費・謝金・物品費をそのために使用する。また、懸案となっている韓国で作成されているデータベースやそれを活用するための機器は、専門家のアドバイスを受けて購入を進める。 最終年度のうちに、収集した資本資料をデータベース化する作業を行うため、アルバイトの人件費も使用を予定している。
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Research Products
(3 results)