2013 Fiscal Year Research-status Report
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23530162
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡山 裕 慶應義塾大学, 法学部, 教授 (70272408)
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Keywords | 行政法 / アメリカ / 行政国家 / 独立行政委員会 |
Research Abstract |
4年計画の3年目に当たる本年度は、大きく二つの方向で研究を推進した。第一は、1910年代から20年代にかけての独立行政委員会の発展過程に関して、調査および考察を進めた。この時期に関しては、既に概要を2013年1月の南部政治学会(アメリカ)年次大会で論文を発表しているが、個別の政策に関する検討としては不十分であった。そのため、連邦取引委員会、合衆国船舶委員会、連邦無線委員会、連邦動力委員会といった新規に設置された委員会の導入過程や、逆に既存の独立行政委員会から権限が立法によって剥奪されるといった事例について検討を行った。そこからは、大統領が20世紀に入って政策的な主導権を徐々に強めていく中で、大統領からの自律性の高い独立行政委員会を疎んじるようになっていき、独立行政委員会による法執行を推進しようとする連邦議会との間で緊張関係が強まっていった実態が明らかになった。 第二の研究成果は、この大統領と独立行政委員会の緊張関係に関わるものである。日本でもアメリカでも、アメリカ大統領が「行政」を司るという理解が一般的であるが、大統領が持つのは執政権である。コモンローの法域では、行政とは政府の三権全てを行使する、権力分立原則に反した本来存在すべきでない法執行の形態と考えられているが、イギリスを始めコモンロー諸国は大多数が立法権と執政権が一体化した議院内閣制をとっているため、執政権の担い手である首相に行政を担わせることへの抵抗が弱かった。それに対して、アメリカでは厳格な権力分立制度がとられているために、連邦議会が大統領に行政を担わせることに抵抗があり、独立行政委員会への委任を推進しようとしたとみられることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、アメリカ行政国家が強い司法性を帯びるようになったのを明らかにしようとしている。そこでは20世紀に入り大統領が政治的な主導権を握るようになった際にどのような展開が生じたのか、それをどう理解するかが分析の鍵となるが、この点について、アメリカが大統領制とコモンローという比較政治的に例外的な組み合わせをとっていることから、比較政治制度論的なアプローチで説明を行う道筋がついた。この点に関しては、理論的な整理を行った論文を執筆して、本年度のアメリカ史学会の年次大会で報告しており、本研究課題のとりまとめに向けて道筋がついたものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は本研究課題の最終年度となるため、ここまでで得られた知見を踏まえてアメリカ行政国家の司法化の過程を、理論的、歴史的な見地から論文としてとりまとめていきたいと考えている。また、6月に予定されている政策史カンファレンス(オハイオ州コロンバス)では、連邦準備制度の成立を事例として報告を行い、有益なフィードバックが得られればと期待している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度には、アメリカ政治学会年次大会(シカゴ市)での論文報告が採択され、発表を予定しており、予算に旅費・滞在費を計上していたところ、勤務校での公務のためやむなく出張を中止せざるをえなくなった。 この分の予算は、2014年度に採択された政策史カンファレンスへの出張経費として有効に活用する予定である。
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Research Products
(1 results)