2013 Fiscal Year Annual Research Report
戦時在独日本大使館員の亡命をめぐる情報戦ーー崎村茂樹の軌跡と周辺
Project/Area Number |
23530170
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
加藤 哲郎 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (30115547)
|
Keywords | 崎村茂樹 / 日独関係 / 情報戦 / 諜報 / 荒木光太郎 / 荒木光子 / G2 / ウィロビー |
Research Abstract |
最終年度である平成25年度は、米国及び中国での崎村茂樹情報の収集と共に、これまでの研究成果を書物にまとめる準備に入った。米国での調査では、崎村茂樹の学問的活動と戦時日独文化交流活動のキーパースンである、崎村の指導教官・東大経済学部・荒木光太郎教授(戦後追放され占領期GHQ・G2歴史課日本側代表)及びその夫人・荒木光子についての情報を、米国国立公文書館等で見つけることができた。この点については、日本側外交・軍事資料を用いてではあるが、阿羅健一『秘録・日本国防軍クーデター計画』(講談社)というノンフィクションが荒木夫妻を扱っており、夫妻が日本の再軍備ばかりでなく、占領期米軍の対中国政策でも重要な役割を果たしてきたことが明らかになった。こうした情報をもとに、崎村茂樹の敗戦時旧満州国残留・中国内戦期米国領事館勤務が、荒木夫妻及びGHQ・G2ウィロビー少将の諜報活動と関わるのではないかと仮説をたて、夏に上海・西安で現地調査を行ったが、中国とう案館の史料公開は国際的に見て著しく遅れており、1945ー55年の崎村茂樹の中国滞在(45ー50年は長春・北京の米国領事館勤務、50ー55年は米国の「経済諜報」容疑で中国の監獄に拘禁)についての第一次史料・有力情報は得られなかった。 この間の科研費調査での崎村茂樹関連情報をも採り入れて、単著『日本の社会主義ーー原爆反対・原発推進の論理』(岩波現代全書)、『ゾルゲ事件ーー覆された神話』(平凡社新書)を公刊することができた。崎村の戦時在独日本大使館勤務・スウェーデン亡命については、ドイツの研究協力者から追加資料を得たが、崎村茂樹研究の総まとめは、中国滞在期については謎を残したままで、単著にすることにした。
|
Research Products
(9 results)