2013 Fiscal Year Research-status Report
近代エジプトにおけるアラブ部族系政治エリートの変容
Project/Area Number |
23530171
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鈴木 恵美 早稲田大学, イスラーム地域研究機構, 招聘研究員 (00535437)
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Keywords | エジプト / 地域研究 / 政治エリート / 政治学 / アラブ部族 / 議会史 / ナショナリズム / 社会史 |
Research Abstract |
本研究の3年目にあたる平成25年度は、予定通り20世紀前半に絞ってアラブ系部族の名望家を考察した。資料調査としては、国立図書館においてウンマ党機関紙と当時の複数の新聞記事を対象に調査した。その結果、1930年代前半に中央議会においてみられたワフド党と立憲自由党の対立が、メニア県やベニスエフ県など南部地方都市においても大規模に、しかも時には暴力を伴う形で展開されていたことが明らかとなった。これまでの研究調査では、中央議会での対立のみが指摘されてきたが、実は中央の政治的争いが、地方政治にまで深く影響を及ぼしていたことを実証することができた。 また名望家のネットワークについては、具体的に、シャルキーヤ県のフォーダ家、シャムスィー家、アバーザ家を中心とした婚姻によって形成されたネットワークの全容を明にした。その上で、これらの家族の政党運営の関係性も考察した。その結果、デルタ地域において主に綿花業で財をなした名望家はワフド党に所属する傾向がみられたが、その結束は緩いものであった。つまり、欧州の貴族階級と違い、本研究の考察対象とするエジプトの支配階層である名望家層の共通点は中央議会の議員であることであると結論づけられた。さらに、一族から複数の議員を国会に送っていた名望家のなかには、その家族間の関係が必ずしも良好ではなかった事例も複数確認することができた。 現地調査については、予定されていた中部メニア県に残されている王政期のリビア系部族の名望家らの邸宅の調査は、平成25年度を通して同県の治安が極度に悪化したため延期した。そのため、最終年度の平成26年8月から9月にかけて実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、予定通り20世紀前半の名望家のネットワーク、政党運営について調査することができた。数の多いデルタ地域における名望家の調査は困難を伴うものであるが、これまでのところ最も数の多いシャルキーヤ県の名望家の調査をほぼ終えることができた。 現地におけるフィールド調査については、治安悪化のため延期したが、幸い平成25年度の研究への影響はほとんどないことから平成26年8月に実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、まず平成25年度に延期したフィールド調査を実施する。そして、研究計画の通り、これまで考察の対象とした名望家の生活様式の変化についても調査する予定である。そして、それらのエジプト王室との関係についても考察する。また最終年度は、研究の実施に加えて、これまでの研究成果を総括するための論文を執筆する予定である。
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