2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530177
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
松本 充豊 天理大学, 国際学部, 准教授 (00335415)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 台湾 / 執政制度 / 政党 / 政党組織 / 国民党 / 民進党 |
Research Abstract |
本研究の目的は、執政制度の類型の違いが政党のあり方にもたらす影響に注目して、台湾の民主政治における政党組織とその行動の変容について考察することにある。本年度は、第1に、関連する理論的な研究成果の動向とその理解に努めた。その結果、目下のところサミュエルズとシュガートによる「大統領制型政党(presidentialized party)」論(2010年)が中心であり、各国の事例に関する実証研究は端緒についたばかりであることが判明した。第2に、台湾の二大政党(国民党・民進党)の発展の歴史的経緯について考察し、民主化以後の両党の発展にとっての初期条件を明らかにすることを試みた。選挙制度と政党システムのあり方は政党の発展を規定する重要な要因となる。台湾では民主化以前から議会の一部改選が行われていたが、そこでは一貫して中選挙区制が採用され、擬似ヘゲモニー政党制という政党システムが、民進党の結成、戒厳令の解除を契機にヘゲモニー政党制へと変化したことを明らかにした。国民党と民進党の前身である「党外」勢力はこうした環境の下でそれぞれの組織を発展させたが、国民党は戦後直後に確立されたレーニン主義的な組織構造を柱としつつ、「責任区制」等の組織戦を有利に進める仕組みを形成することで、中選挙区制による選挙での勝利を確保するとともに、組織の集権性を維持してきた。他方、党外勢力は戒厳令下では組織をもつことができなかった。そのため、選挙では宣伝戦を中心に戦いながらも、党外雑誌の出版や選挙時の「助選団」という共同の応援組織の結成を通じて、政党組織に代わる可能な限りの機能的代替物を作り上げていった。本年度の研究において、民主化以前の制度的条件下における国民党と党外勢力の組織形成を検証したことで、それが二大政党のその後の発展をどのように規定したのかを検討する重要な手掛かりを得ることができたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した本年度の研究の目的については文献調査を中心におおむね達成されたと考えている。ただし、本年度の研究費の交付額が当初7割であったことから、計画実施の際に多少慎重になりすぎた面があり、現地調査は予定した回数だけ実施したものの、それが占める比重を多少小さくする結果となった。その反面、本年度は研究実施期間中に台湾で総統選挙(大統領選挙)と立法委員選挙(議会選挙)が行われたことから、その分析を行うに際して、本研究課題である執政制度と政党組織との関係から考察を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、民主化期における議院内閣制から半大統領制への台湾の執政制度の変容が、二大政党の組織と行動に与えた影響を明らかにすることが第1の課題となる。そのため、既存の研究成果に関する文献調査の実施に加えて、休暇期間を利用して台湾での現地調査を複数回実施し、現地での資料収集や研究者との意見交換を行う。現地調査の際には、関係者に対するインタビュー調査も行う予定である。また、国内でもインターネットを活用するほか、都内にある関連研究機関の資料センター等での資料収集を積極的に行うことを計画している。 第2に、本年度実施した調査内容の取りまとめを行い、二大政党の発展の歴史的経緯に関する研究を総括する予定である。これらを前提として、国内の関係学会や研究会での報告、あるいは論文の発表とそのために準備を行う予定である。研究成果を公表する場を模索していきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は次年度の使用することになった研究費が発生した。その理由は上述のとおり、当初研究費の交付額が限定されたことから、多少研究費の使用に慎重になりすぎたためである。次年度は本来の研究計画に基づいて、交付される研究費を使用する予定であるが、次年度使用額に相当する研究費については、まずは現地調査の比重を高まることに使用したいと考えている。これにより次年度の活動内容をより充実させると同時に、本年度十分対処できなかった点を補填できるはずである。そして、本年度の研究活動において、資料の収集、保存や整理にあたり、情報記録・処理面での作業効率の向上と内容の充実を図る必要性を痛感した。そのため、次年度使用額の一部を利用したノートパソコン等の情報記録・処理機器の調達を計画しており、そうすることでより有効かつ効率的な研究活動の実施に資するようにしたいと考えている。
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