2012 Fiscal Year Research-status Report
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23530177
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
松本 充豊 天理大学, 国際学部, 准教授 (00335415)
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Keywords | 台湾 / 執政制度 / 政党 / 政党組織 / 国民党 / 民進党 / 直接選挙制 |
Research Abstract |
本研究は執政制度の違いが政党のあり方にもたらす影響に焦点をあて、台湾の民主政治における政党組織とその行動の変容を考察するものである。本年度は、昨年度の研究成果に基づき、1990年代初頭以降、台湾で段階的に進められた民主化、それに伴う議院内閣制から半大統領制への執政制度の変容が、二大政党(国民党・民進党)の組織に与えた影響を考察することに努めた。その結果明らかになったのは、第1に、各政党が最も大きな制度変化と受け止めたのが、総統選挙への直接選挙制の導入だったことである。1996年の直接選挙制による総統選挙の実施後、両党内では党組織の改革の必要性が認識されていた。第2に、しかしながら、両党ともに組織改革を実現できなかったことである。国民党では党指導部内で党組織の「選挙マシーン」化という議論が浮上したが、初代民選総統となった党首の李登輝が憲法改正を最優先課題とした結果、党の改革論議は立ち消えとなった。他方、民進党でも党改革が提起された。それは党内権力構造の抜本的な改革を求めたもので、総統選挙の制度改革に対応した党首選挙への党員直接選挙制の導入、それに見合った党首の実質的権限の強化を柱としていた。ところが、前者の改革は実現したものの、後者は失敗に終わり、合議制という意思決定原則が維持された。つまり、半大統領制への執政制度の変容の過程で、特に総統選挙の直接選挙制という制度変化が政党に組織改革のインセンティブを与えたことは間違いないが、二大政党ともに改革はスムーズに進まなかった。民進党では党首は実権を持たないままであり、同党出身の総統が党首を兼任しても同党を制御できるだけの権力構造にはならなかった。国民党の組織改革は2000年の政権喪失を待つこととなるが、その改革が執政制度の変容に対してどの程度対応したものだったのかは、今後の検証が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した本年度の研究の目的については、文献調査を中心におおむね達成されたと考えている。現地調査は予定通り実施し、資料収集や現地研究者との意見交換を行うことができた。また、日本国内での資料調査も積極的に実施した結果、特に政党に関する理論的な研究における新たな動向を把握し、その成果を吸収することができた。研究成果については平成25年度内の発表に向けて準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は民主化後の台湾政治における半大統領制という執政制度が二大政党に与えた影響を明らかにすることが第1の課題となる。そのため、既存の研究成果に関する文献調査の実施に加えて、休暇期間を利用して台湾での現地調査を複数回実施し、現地での資料収集や研究者との意見交換を行う。その際には関係者に対するインタビュー調査も計画している。また、国内での都内にある関連研究機関の資料センター等での資料収集や学会への参加を積極的に行うことも計画している。 第2に、本年度は本研究の最終年度となることから、本年度に実施した調査内容の取りまとめを行うとともに、本研究課題全般の総括を実施する予定である。研究成果については早ければ本年度中に公開する機会を模索したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は次年度に使用することになった研究費が発生した。その理由は昨年度より本年度に繰り越した研究費が多額であったことと関係している。本年度の研究計画はおおむね順調に進んだことから、次年度に繰り越した研究費は妥当な範囲のものと認識している。 次年度は研究計画に基づいて研究費を使用する予定であるが、現地での調査活動に加えて、国内での調査活動や関連テーマの学会や研究会への参加も積極的に行い、その経費に重点的に研究費を充てたいと考えている。また、収集した資料の保存や整理にあたり、情報記録・処理面での作業効率を高めるために追加的な関連機材の購入が必要であると判断される場合には、早期に対応することで研究活動の効率的な実施に資するようにしたい。
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Research Products
(8 results)