2012 Fiscal Year Research-status Report
複線型自治制度における地域産業振興と府県機能に関する実証研究
Project/Area Number |
23530180
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Research Institution | Shimonoseki City University |
Principal Investigator |
水谷 利亮 下関市立大学, 経済学部, 教授 (00310897)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平岡 和久 立命館大学, 政策科学部, 教授 (70259654)
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Keywords | 複線型自治制度 / 地域産業振興 / 府県機能 / 府県出先機関 / 地域的分権 |
Research Abstract |
本研究は、「複線型自治制度における地域産業振興と府県機能に関する実証研究」として、行政学と地方自治・地方財政論の視点から府県の地域産業振興政策に焦点をあて、府県出先機関を含む府県の政策立案・実施・評価過程と財政・予算編成過程の実態を調査・分析し、府県出先機関圏域における地域的分権のあり方と府県出先機関の政治・行政的機能・役割が効果的・効率的な政策実施の要因の1つであることを実証することが目的である。出先機関圏域での府県・府県出先機関-市町村-地域・コミュニティ関係、関西広域連合発足など府県圏域を超えた複線型の動向にも注目する。東北地方の地域産業振興政策の分析における東日本大震災の復興政策との関連も視野に入れ、地方自治の制度設計のあり方として道州制ではなく府県機能の強化が重要であることを示唆する意義がある。 平成24年度には、文献・資料の検討として行政学や地方自治・地方財政論等の学術研究・文献や統計・行政資料などをフォローした。現地調査と資料収集は、府県や府県出先機関と市町村における地域産業振興政策関係各課、外郭団体、民間企業等に対して6道府県で実施した。北海道(帯広市、東川町)、宮城県庁、福島県(会津地方振興局、会津若松市)、和歌山県(西牟婁振興局、田辺市、古座川町、本宮観光協会)、高知県庁、徳島県(徳島県西部総合県民局)等であった。 環境・エネルギー政策において小規模分散型の取り組みが効果的・効率的であることが指摘されているが、生活と生業の再建・維持が同時に必要とされる地域産業振興政策においても小規模分散型での政策実施が求められている。府県が市町村や地域・コミュニティの地域産業振興を効果的に支援・補完するには、府県内を地域的に分権・分散した府県出先機関・総合型出先機関の圏域での地域振興計画策定と実施のあり方が重要な要因の1つであることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の計画の達成度は、3年計画の2年目の研究として、おおむね順調に進展していると考える。これまでの調査・研究の成果の一部を、平成24年5月に開催された日本行政学会において研究報告を行うとともに、2本の論文にまとめた。 ①文献・資料の検討としては、行政学や地方自治・地方財政論等の国内外の学術研究・文献や統計資料・行政資料などを一定程度フォローすることができた。 ②現地でのヒアリング調査と資料収集については、府県や府県出先機関と市町村における地域産業振興政策関係各課、外郭団体、民間企業等に対して、当初計画よりも多くの6道府県において実施することができ、期待していた情報と知見を獲得することができた。また、東日本大震災との関連で、2県において府県機能に関するヒアリング調査と資料収集を行うことができたことは重要である。 ③府県出先機関に対するアンケート調査は、新しい知見とより多くの研究成果の蓄積を踏まえた方が適当であると考えたので、次年度の最終年度に延期した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、本研究の最終年度であり、これまでの2年間の研究成果を受けて付加的・補足的な調査・研究を着実に進めていき、3年間の研究成果のまとめの作業を行い論文にまとめるとともに、最終報告書を作成する。 (1)まず、文献・資料の検討を引き続き実施する。 (2)現地でのヒアリング調査と資料収集については、比較分析のための新たな府県における調査に加えて、平成23年度と24年度に調査を行った府県において付加的・補足的調査を行うなど引き続き実施する。研究の対象となる政策領域と比較分析の項目などはこれまでと同様である。予定している現地調査先は、6つの府県などである。①熊本県:完全総合型の府県出先機関体制で、平成25年度から4広域本部10地域振興局体制へと組織改革を行って地域産業振興政策を深化させようとしており、九州行政機構と関連している。熊本県本庁、県内の広域本部と地域振興局、市町村などの行政関係各課と地区や民間団体を予定。②九州地方知事会事務局:国の出先機関の受け皿として九州地方知事会が提唱している九州広域行政機構(仮称)に関する動向について調査を行う予定。③京都府:完全総合型の府県出先機関体制で、関西広域連合に参加している。京都府本庁、県内の広域振興局、市町村などの行政関係各課と地区や民間団体を予定。④高知県:完全個別型の府県出先機関体制で、「四国州」と関連があり、平成24年度に行った調査の補足を行う。県庁、県内の地域産業振興監、市町村などの行政関係各課と地区や民間団体を予定。⑤岩手県:完全総合型の府県出先機関体制で、東日本大震災の復興との関連で地域産業振興政策に関する調査を行う。⑥山形県:完全総合型の府県出先機関体制で、県庁、県内総合支庁、市町村などの行政関係各課と地区や民間団体を予定。 (3)いくつかの府県における府県出先機関に対するアンケート調査を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する予定の研究費が生じたのは、研究を効果的に実施するためにヒアリング調査先を変更したことで旅費が予定していたよりも少額になったことと、府県出先機関に対するアンケート調査の実施を次年度に行うことにしたためである。 平成25年度の直接経費の使用予定額は、「次年度に使用する予定の研究費」約20万円と合わせて150万円である。 物品費において、40万円を研究に必要な図書などの購入にあてる予定である。6つの府県などにおいてヒアリング調査と資料収集を行うために旅費が必要であり、90万円を使用する予定である。人件費・謝金とその他において、アンケート調査の郵送費やアンケート調査の整理などで必要なアルバイト代などで20万円をあてる。
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Research Products
(3 results)