2011 Fiscal Year Research-status Report
環境イシューの多義化とEU環境リーダーシップの諸相
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23530188
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
和達 容子 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 准教授 (30325675)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | EU / 環境 |
Research Abstract |
経済通貨同盟完成以降のEUの重点課題に、一つのアクターとなること、すなわち国際社会において一つの勢力として影響力を示すことがある。拡大、そして国際問題への関与や対外的にEUを代表するポストの新設など目に見える形でその意図は伝わっている。 環境政策領域では、EUは当初から国際環境政策への関心を示していた。EUだけではあらゆるタイプの環境問題の解決に対処できないからである。1990年のダブリン欧州理事会では、国際社会において環境リーダーシップをとる決意を謳った「欧州環境宣言」を採択し、1992年のマーストリヒト条約では「国際環境問題の解決に貢献すること」がEU環境政策の目的の一つとなり、国際環境政策に対するEUの主導意欲はより鮮明になっていった。時期的に判断して、環境政策の重視とEUの国際的リーダーシップ獲得意欲が集約されたものと解釈できよう。 EUの環境対外行動の積極化の背景には、第1に環境問題解決への意欲がある。国際協力構築の主導的役割を果たす意図を明確にした行動は、EUを規範的パワーと見なすことにつながる。第2に、環境問題解決以外の実質的利益の獲得である。2001年の『持続可能な発展戦略』、2002年の『第6次環境行動計画』、2006年の『第2次持続可能な発展戦略』といった一連の文書の中で、EUは、国際環境レジーム形成への積極的関与と同時に、経済活動と環境対策の一体化を強調した。いわゆる国際競争力と環境イシューのリンクが重視されている。環境措置や規格の採択を通じて、経済と表裏一体と認識された環境分野で国際社会をリードすることは、EUにとって環境保護という理想を語るだけではない意味があるということになる。 文献およびEU公式文書調査により、以上のような環境イシューに関わるEUの近年の特徴について概観した。今後は、この特徴を具体的な事例の中で検証することになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
予定外の個人的事情により平成23年度前期は全く研究活動を行うことができなかった。後期に入ってから研究活動を再開したものの、十分に展開できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的や研究手法において当初の計画に変更はない。研究作業の速度を上げることによって初年度着手できなかった研究活動分を詰めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の通り研究活動が十分でなく、予定していた海外調査が行えなかった分については、次年度に執行する予定である。
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