2013 Fiscal Year Research-status Report
環境イシューの多義化とEU環境リーダーシップの諸相
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23530188
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
和達 容子 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 准教授 (30325675)
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Keywords | EU / 環境政策 / 持続可能な発展 |
Research Abstract |
論稿「EUの環境リーダーシップとEU-ETSの航空業界適用」は、EUが抱く環境リーダーシップへの意欲を踏まえながら、EUの域内制度である排出量取引制度を航空業界へ拡大した際に起きた国際的議論を取り上げた。EUは気候変動対策という正当性を掲げるが、域外国は航空機の気候変動対策を扱うべき国際民間航空機関(ICAO)での議論を強く求めた。ICAOは設立当初の目的ではない当該対策には消極的であり、EUの制度が域外の航空大国に認められなかったばかりか、ICAOの議論に効果的な影響力を与えることもできなかった。 「環境イシューの多義化とEU環境リーダーシップの諸相」というタイトルで行った研究報告は、EUが近年力を入れている環境対外行動において芳しい成果を得られなかった事例について取り上げた。ICAOにおける気候変動対策、UNFCCC締約国会議におけるポスト京都議定書の議論、大西洋クロマグロのワシントン条約付属書I掲載問題の3事例である。第2の事例では、京都議定書で採用された削減目標値を掲げるという厳格なアプローチは米国・中国等排出大国の受け入れるところでなく、2020年からの新しいレジームはカンクン合意のそれに落ち着く様相である。第3の事例では、大西洋マグロをワシントン条約で規制する提案をすることで域内合意をまとめたEUが、当該締約国会議における投票で事前の予想に反して大敗を喫することとなった。 EUは環境イシューについて規範アクターとして振る舞い、先進的な実践と提案を以って国際社会に働きかけている。しかし、上記の事例でEUは国際社会の少数派となっており、肝心の投票の場面では経済発展を遂げるかつての途上国からの協力が得られていない。とりわけ対策に時間的余裕のない気候変動問題については、EUの焦燥が募る状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究開始初年度に研究代表者が病気休暇を取る予定外の事態に陥り、研究復帰及び研究立て直しに時間を要した。しかしながら、研究期間延長を認めていただき、最終年度で成果をまとめるべく、平成25年度は論文公刊や研究発表の機会を得て作業を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は現地調査やインタビューを中心にした実証研究として計画していたが、上記理由により、欧州統合及びEU環境政策の理論的な考察に比重を移すことに変更した。アプローチは異なるが、同一テーマを維持し、当初計画に相当する成果を追求していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者の体調不調により海外調査を実行できなかったため、旅費の使用額が当初計画より少なくなったため。 研究期間延長を認めていただき、引き続き当初計画の研究目的を達成すべく作業を進める。支出先については特段の計画変更を必要としないと考える。
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