2011 Fiscal Year Research-status Report
人の越境移動管理を目的とするEU外交とグローバル秩序形成との関連についての研究
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23530192
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
岡部 みどり 上智大学, 法学部, 准教授 (80453603)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者交流(EU主要国) / 国際情報交流(EU加盟国) |
Research Abstract |
平成23年度は、人の越境移動と国際関係とのかかわりを専門とする国内外の研究者との意見交換を通じて、問題意識を再確認し、人の越境移動についての地域的な取り組みと広くグローバルな規模での国際協力枠組みとの関連について仮説を設定することを予定していた。これに基づき、国内外の研究者との意見交換をさまざまな媒体を通じて行った。まず、ハンブルク大学で12月に日本とドイツおよびEUの外国人労働者受け入れ政策及びとりわけ高度技能を持つ外国人の受け入れについての経済政策との関連についての比較検討に関するシンポジウムが開かれた。同大学からの招聘により、このシンポジウムに報告者として出席予定であったが、健康不良のため出席を断念した。しかし、報告用ペーパーを提出し、同シンポジウムにおいて配布され、それに基づく協議が行われたと開催者より報告を得た。同大学のガブリエル・フォークト教授とは、現地に赴くことができなかったため不十分ではあったが、電子メール等の媒体を通じて、かろうじて協議を行うことができ、次年度以降の共同研究の方向性について合意に達することが可能となった。他方、次年度に行う予定の調査の一部を先取りし、ブリュッセルの欧州委員会図書館での資料収集と、欧州連合閣僚理事会司法内務部局事務次官であるパオロ・マルティノ・コッス氏との打ち合わせを行った。国内研究者としては、中東研究センター 主任研究員の坂梨祥氏からの講義を受け、EUの地中海政策が中東危機により受ける影響について検討した。なお、本年度の研究や調査の結果、全体の研究計画の見直しが必要と判断した。当初の予定を一部変更し、対外交渉の評価のために必要な労働関係部局や非政府団体の動向についての調査を新たに加えることにした(詳細は後述のとおり)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実際の採択決定後、現地調査にあたるまでの期間が予想以上に限られていたことと、自身の体調不良が原因となり、実際にフィールド調査や学会出席のために現地に赴くことができなかった(特にハンブルク大学)ことが主たる要因である。しかしながら、その反面、平成24年度中に予定していたEU閣僚理事会の司法・内務担当者との打ち合わせを進めることができ、平成25年度に開催を予定しているシンポジウムの運営に向けて、予定より早く準備を進めることが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、特に経済連携交渉や開発援助等の対外(経済)政策の中に人の出入国管理の調整をアジェンダとして組み込んだEU外交の特殊性を検討することを主たる目標とする。そのため、このような独自の外交路線を可能にしたEU内部のアクターを司法・内務関係当局に限定せず、対外援助部局(欧州委員会及び閣僚理事会や欧州対外関係部局(External Action Service. 以下EAS))、労働関連部局や移民支援団体などの非政府団体を加えることとする。とりわけ、対外援助と人の越境移動管理の関連については、上記団体に加えて、移民、難民問題を管轄するハイ・レベル・ワーキンググループ(High Level Working Group on Asylum and Migration)といわれる省庁横断的作業グループの統括官(パオロ・コッス氏が兼任している)との意見交換を頻繁に行っていく。 また、人の移動受け入れのEU域内経済効果についてのデータ収集も行っていく。しかしながら、経済学的な分析手法に依拠するというよりは、越境移動者を受け入れることのコストやメリットについて関係団体の持つ意向の変化がどのようなものかを調査することに重点を置く。具体的には、欧州連合組合(ETUC)、欧州産業経営者連盟(UNICE)を中心とする雇用者・労働団体や、欧州規模での移民や難民支援団体(NGO等含む)から意見を聴取する。さらに、EU外交が国際機関やグローバルな国際協力の枠組みにおいてどのように評価されているかに関して、主に文献や資料収集にあたることでこれを追究する(次年度は、国連難民高等弁務官事務所や国際移住機構より意見聴取をするが、右作業はその下準備である)。 以上の研究に関連するような学会が国内外で開催される際には、これに出席し、報告者あるいはパネル参加者と何らかの形で意見交換を図る所存である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、ブリュッセルをはじめとする欧州連合関係各拠点における調査に重点をあてる。まず、欧州委員会の対外援助総局(CIS、西バルカン地域担当および北アフリカ担当)と、EAS内に新設された援助部門、加えて、上述のハイ・レベル・ワーキング・グループとの意見交換のために、まずはブリュッセルに向かう。なお、平成23年度の調査により、EUの対外交渉の分析の際に、新たにEU規模及び加盟国規模での労働組合、雇用者組合、移民労働者支援団体等の立場や動向についての調査が必要になることが分かった。したがって、当初予定していた研究協力者の一部を交代し、主に労働分野を専門とする新たな協力者(新潟県立大学国際地域学部講師、鈴木均氏)との連携の下に、上記団体へのインタビューや関連資料収集にあたる所存である。ちなみに、移民労働者支援団体の動向について豊富な資料を蓄積しているシンクタンクであるMigration Policy InstituteはワシントンDCに本部を構えているが、2012年3月、ブリュッセルに欧州部局を新たに設けたため、ブリュッセルでは同シンクタンクも訪れる予定である。以上のように、今年度はブリュッセルを中心に調査を進める都合上、再三現地を訪れる必要性も視野に入れている。 このほか、特に北アフリカ諸国との人の越境移動管理調整を目的としたEU外交の動向を調べるために、オックスフォード大学国際移民研究所(International Migration Institute: IMI)にて調査を行う。そのほか、関連する国内外の研究会および学会に出席する。
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