2011 Fiscal Year Research-status Report
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23530198
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山田 満 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (50279303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 健治 東洋英和女学院大学, 国際社会学部, 教授 (30512727)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 東ティモール / ラオス / 紛争後国家 / 適正規模の開発 / 東南アジア / ASEAN / 政治社会の安定 / 経済発展 |
Research Abstract |
本科研研究は、紛争後東ティモールの開発とインドシナ紛争を経験したラオスとの開発プロセスを比較することである。また、紛争後国家の適正規模の開発とは何かを両国の政治社会や経済発展を比較検討することで検討する。 東ティモールには2011年9月に渡航し、ラオスには2012年3月に渡航した。まず東ティモールは独立後2回目となる国政選挙が、2012年3月に大統領選挙と同4月に決選投票が実施され、7月に国民議会選挙が予定されている。東ティモールは、「戦略的開発計画」(SDP)が発表され、「開発」の勢いが増している。しかし、インフラの発展やGNI(国民総所得)の増大に対して、人々の生活状況の大きな変化はまだみられない。 他方、ラオスは1986年に中央統制経済から市場経済に方針転換をして、すでに四半世紀が過ぎ、1997年の経済危機以後、6~7%前後のGDP経済成長を遂げている。近年では8%に達しており、首都ビエンチャンの建設ラッシュが見られる。2011年から2015年までの第7次社会経済開発計画が発表され、着実に都市部では経済効果が現れている。 期せずして、東ティモールでは円借款が開始し、ラオスでは再開している。ただその一方で、農村や地方の開発の進行状況は、ラオスにみられる社会関係資本の充実度から両国の格差が指摘できる。 また、ラオスは2004年11月にASEAN議長国としてASEANサミット、ASEANプラス3などASEANとの連携が活発であり、また2008年3月にはメコン流域開発(GMS)首脳会議を開催している。2009年12月には、第25回東南アジア競技大会(SEAゲーム)も開き、政治の安定が地域の信頼と経済の活性化につながってきている。他方、東ティモールでは上記の通り独立後2回目の国政選挙が実施され、その結果次第での政治・社会の安定と経済発展の展望が期待される段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年度は、東ティモールとラオスを訪問し、両国における政府関係者を中心に、開発政策に深く関与する、あるいは知見を有する研究者を訪問する計画を立てた。その点で、東ティモールでは、政府関係者(インフラ省)、国連(UNMIT)、駐東ティモール日本大使館、JICA、さらには東ティモール国立大学を訪問して、聞き取りを実施した。また、ラオスではラオス教育省、ラオス国立経済研究所、駐ラオス日本大使館、ラオス日本センター、メコン河委員会などを訪問した。 ただその一方で、特にラオスに関しては、ラオス調査担当の研究分担者や代表者が職務に忙殺され、滞在期間が短かった点、予定にはなかったものの、地方都市への訪問、市民社会やNGO関係者などへの聞き取り調査や訪問の機会を逸した点で課題を残した。 その他、2011年度10月開催の日本国際政治学会で東ティモールに関する報告及び、報告書を提出して、研究成果の一端を披露することができた。また、日本側研究協力者として、早稲田大学大学院社会科学研究科院生を東ティモールに派遣し、帰国後は研究成果を報告してもらい、科研研究テーマに関する研究の裾野を広げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度も現地調査と現地資料の収集を基本に据える。2012年度も原則、東ティモールとラオスの現地調査を行う予定である。東ティモールは独立後2度目の国政選挙を終え、次期政権のもとで戦略的開発計画(SDP)がどのように進められるかを注目する必要がある。ラオスに関しては、人民革命党による支配は安定しており、ミャンマーのような少数民族のなく、むしろ政治社会への参画の機会が保障されている。したがって、ラオスでは地方都市、農村地域での開発状況を視察、あるいは聞き取りをする必要がある。ただし、実施は2012年か、2013年にどちらかに行い、2012年度はスリランカなどアジアの他の紛争後国家の視察、さらにはニューヨークの国連や国連開発計画での聞き取り調査も考える。 研究成果として、2011年度同様に、学会や研究会での報告を実施する。また、科研中間報告、前回科研研究の成果として英文の論文や東ティモール関係の著書を出版することも考えたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度研究経費の大半は、東ティモール、ラオス、さらにはスリランカやアジア諸国、ニューヨークの国連関係(UNDP等)訪問のための海外渡航出張旅費に当てる。また、現地研究協力者への謝金、現地調査の移動にともなう交通費に利用する。さらに、国内研究者との意見交換や資料収集、研究会参加などにともなう国内出張費にも利用する。それ以外では、現地調査対象者との通信費、電子媒体の海外資料のダウンロード代、印刷機、トナーなどのインク代、紛争や開発、地域に関わる関係図書購入代にも利用する。
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Research Products
(4 results)