2013 Fiscal Year Research-status Report
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23530198
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山田 満 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (50279303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 健治 東洋英和女学院大学, 国際社会学部, 教授 (30512727)
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Keywords | 開発段階 / 国民和解 / 国際連合 / 国連開発計画 / NGO / 宗教対立 / 経済格差 / 紛争予防 |
Research Abstract |
平成25年度は当初、最終年度として位置づけていたが、研究分担者の体調不良により、あと1年継続研究をすることにした。それを踏まえて、当該年度の研究実績を記する。科研費を利用した海外調査は、まず2009年5月に25年続いていた内戦を武力制圧で終結させたスリランカを訪問した。スリランカの紛争は、民族紛争と言われたが、今後北部・東部地域に集住するタミル系住民への生活支援が平和構築と紛争予防に直結することを再認識した。聞き取り調査は主に民主化NGOや、開発NGOのサルボダヤなどのNGOを中心に行った。また、2014年2月には、定点観測調査として東ティモールを訪問した。前年の国連の完全撤退後の東ティモールの平和構築は、すでに開発段階へ踏み出していることが理解できた。今回は、JICAおよびJICA専門家、日本大使館スタッフ、現地日本のNGO関係者、東ティモール国立大学教員、東ティモールNGOフォーラム・スタッフとの面談を実施した。これらの聞き取りも踏まえて、今後は都市部と地方、さらには貧富格差の拡大が懸念されることを確認した。2014年3月には、ニューヨークの国連本部のPKOセクション及び国連開発計画(UNDP)本部の東ティモール担当者、紛争後の開発担当者を訪問して、情報収集と意見交換を行った。国連ミッションの成果と反省点などを聞く機会が持てた。 科研費以外の調査では、2013年8月から9月にかけて、深南部タイ・イスラム地域を訪問した。95%の上座部仏教徒と同地域におけるイスラム教徒の関係、国民和解の取り組み、経済格差の現状などに関する聞き取り調査を、南部国立大学のプリンス・オブ・ソンクラー大学関係者とバンコクのマヒドン大学紛争予防平和研究所関係者、さらに現地NGO、タイ国営放送局などの広範囲で実施した。いずれの調査も本研究を考察するうえで有意義であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終的な報告書は出していないが、海外現地調査は順調に進んでいる。紛争後平和構築における適正規模の開発のあり方を紛争経験国のラオスと紛争後10年足らずの東ティモールを比較研究する予定であった。しかし現在のところ、ラオスに関する最終的な報告はまだである。すでに1度、現地調査で特に研究機関と政府関係者からの聞き取りは済ませているが、市民社会やNGOなど草の根レベルの調査を遣り残している。他方、東ティモールにおいては毎年の訪問で、ほぼ具体的な成果を論文として出している。また、現在東ティモールの紛争予防ガバナンスの観点から著書の出版を予定している。 また、両国以外からの本研究に寄与する現地調査を実施している。客観的な視点、さらには補完的な調査として、まずスリランカを訪問した。スリランカ紛争は民族紛争と言われたように、マイノリティのタミル人居住区における今後の開発支援が最大の紛争予防となることが考えられる。しかしながら、現時点での有効な政府からの支援はないようである。他方、開発支援の中心的アクターである国際機関(PKO部門とUNDP)は、紛争後の適正規模の開発支援を実施するうえで非常に大きな役割を担っていることは言うまでもない。今回、国連担当者から直接、開発支援の成果と課題を聞くことができた点は有意義であった。本研究に関する研究成果を出すことに努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
紛争後国家の平和構築は概して脆弱である。順調な国家建設へ踏み込むまでには、安全保障部門の治安部門改革はもちろん、司法部門改革、行政改革などのいわゆるSSR(安全保障・治安改革)が必要不可欠である。しかしながらその一方で、国際社会からの支援が先細りするなかで、雇用創設、産業育成などの開発部門の育成は当該国自身の責任として課せられているのが現実である。国際社会は、紛争後国家の復旧、復興後の社会において開発支援がもっとも重要な平和構築、紛争予防の根幹になることを理解する必要があろう。 本研究は、紛争後社会といっても、当該国が置かれていた紛争の規模、紛争の性質、紛争後の社会構築などによって、開発支援への取り組みが一様ではないという前提で、適正規模の開発とは何かを調査してきた。まずは引き続き、紛争後社会の平和構築と適正規模の開発を、紛争経験国、紛争後国家であった、あるいは継続中のアジア諸国を事例にして、比較検討していく帰納法的なアプローチを取っていきたい。その主要概念として、人間の安全保障を据えて、「人々の個人の安全」、「人々が生活をするコミュニティー」の現状を分析したい。 次に、民主化とガバナンスの視角から、特に紛争後に実施される選挙と人々の政治的参加の現状を、適正規模の開発状況との比較から分析してみる。平和と開発は双子の関係であるといわれたように、紛争原因の主要因として「貧困」「経済格差」などの問題点を明らかにしていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究分担者の体調不良により、最終的な報告書作成が困難になった。特に、本研究における東ティモールとラオスの比較研究を柱に据えている点で、研究分担者が担当する2回目のラオス調査報告が延期になったためである。 基本的には、ラオス現地調査を基本に据えている。ただし、研究分担者の体調不良の回復と調査報告次第では、研究代表者の判断で、他地域、東ティモールの再度の現地調査を行うか、研究上差し障りのあるPCの買い替えなども考えたい。
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Research Products
(2 results)