2015 Fiscal Year Annual Research Report
小国のEU統合政策-国家存続と統合の狭間をめぐる葛藤-
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23530201
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Research Institution | Toyo Eiwa University |
Principal Investigator |
小久保 康之 東洋英和女学院大学, 国際社会学部, 教授 (60221959)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | EU / 小国外交 / EFTA / スイス / マルタ / ベルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、スイスのEU政策について、現地で面談調査を実施し、スイス外務省担当者、主要政党政策立案関係者、研究者らと意見交換を行った。スイスにおける国民投票による憲法改正に伴い導入される予定の大量移民規制法により、同国がEUとの間にこれまで築いてきた良好な双務関係にどのような影響があるのか、またそのような対EU政策の変化が同国国内の政治制度にどのようなインパクトをもたらすのかを検証した。研究成果として、スイス独特の直接民主主義制度がこれまでも同国の対EU政策に極めて重要な影響を及ぼしてきたこと、並びに今回の大量移民規制法の導入をめぐり、スイス国内での対立が激しくなりつつあり、小国スイスがEU統合とどのように折り合いを付けていくのかが極めて難しい局面にあること、同国が模索してきた、EU加盟でもなく、EEA加盟でもない、双務協定によるEUとの関係構築という第3の道を今後も維持していくことができるかどうかが微妙な状況に置かれていることを明らかにすることができた。 研究期間を通じて、EU統合から一歩距離を置いているEFTA加盟の小国であるスイス、アイスランド、ノルウェーがもはやEU統合の流れを拒絶して国家として生き残るのは難しく、EU統合による「欧州化」の波を受け入れざるを得ない状況の中で、EU統合への参加を目指す人々とEUとは距離を置いておきたい人々との間の国内対立が激しくなっており、中央政府の政策がそれによって揺れ動いている現状を整理することができた。また、同じ小国でも、マルタのように、EU加盟後は積極的に加盟国としての責務を受け入れ、EUの枠組みに参加することによる恩恵を享受しようとしている国や、ベルギーのように一層の連邦主義的なEU統合を進めることで、自らの国家利益を守ろうとしている国もあり、小国がEU統合との関係で揺れ動いている様を明らかにすることができた。
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Research Products
(4 results)