2013 Fiscal Year Research-status Report
核拡散のダイナミクスについての複合的手法によるアプローチ
Project/Area Number |
23530206
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Research Institution | Osaka International University |
Principal Investigator |
瀬島 誠 大阪国際大学, 現代社会学部, 教授 (60258093)
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Keywords | 政治学 / 国際関係論 / 核拡散 / コンピュータ・シミュレーション |
Research Abstract |
平成25年度は、当初の研究計画に則り、シミュレーション分析の検討を中心に研究を進めた。本年度におけるシミュレーション分析の検討は主に3つの方向で進めた。 第1は、研究計画初年度に重点的に取り組んだ核拡散についての事例分析・質的分析で得られた知見、および、研究計画2年度に重点的に取り組んだ量的分析の検討で得られた知見を基礎に、新たなシミュレーションモデルの構築を試みた。特に、研究計画2年度における量的分析における分析モデルについて、それらをシミュレーションモデルに構築する試みを進め、いくつかのモデルを構築し、コンピュータで実験した。その結果についての妥当性や頑強性の結果検証については慎重な分析が必要である。それらは、当初の研究計画に予定していた、4年度目である平成26年度に主に量的分析と質的分析の両側面から検討される。 第2は、2009年に公表した「核拡散のダイナミクスについてのシミュレーション分析」というこの研究プロジェクトの基礎となった研究で利用したモデルの再検討である。そこで使用したデータや変数では、使用した年が限られたものであること、また、核保有のデータなどについても複数の可能性がある。モデルそのものの再検討に加え、それらのデータを加味した検討を行った。 第3は、インド、パキスタン、イランや北朝鮮への核拡散に重要な役割を果たす中国の動静について、パワー移行論の観点から行ってきたシミュレーション分析について、使用したデータをより正確なものに置き換えた上で、再度、分析を行った。その成果は、「中国の台頭とパワ一移行理論の射程」山影進編著『アナーキーのもとの秩序』(書籍工房早山、2014年出版予定)にて報告されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の5年間の研究期間のうち、3年目までの達成度は、おおむね当初予定していた実施計画に沿って順調に進められていると評価する。 初年度に当たる平成23年度の研究目的は、核拡散のダイナミクスに関する既存の質的研究を再検討し、l2年度目の量的研究と3年度目のシミュレーション研究の基盤作りであった。そこでは、開発技術や資源などの、核開発に必要な供給サイドの議論から、次第に対外的な脅威の存在や国内情勢など、核兵器を開発する際の需要サイドの要因を重視する議論に焦点が移行していることを明らかにした。しかし、パキスタンで発覚した核開発の闇のネットワークの存在など、供給サイドの議論も依然として重要であり、供給・需要の両サイドを取り込んだ分析が重要である。その点については、瀬島誠「核拡散とその対応」(吉田和男・藤本茂編著『グローバルな危機の構造と日本の戦略』(晃洋書房、2013年)において明らかにした。 2年目に当たる平成24年度は核拡散の量的分析を中心に検討した。そこでは、数量分析にとっては死活的な事例の少なさという限界があり、それを核拡散以外の拡散現象一般に拡げる対策を検討した。しかし、核兵器という国家の権威発揚というシンボリックな現象と他の拡散現象を同列に捉えることができるかという問題が課題として残った。 平成25年度には、既存の質的分析におけるモデルを元に、コンピュータシミュレーションモデルを複数作成し、それらの結果分析を進めた。さらに、複数のモデルを組み合わせる複合的なモデル作成に向けて、その雛形となる、2009年のモデルについて再検討と新たなデータによる分析が行われた。それによって、研究計画の4年目で計画している、量的分析、質的分析、シミュレーション分析を組み合わせた、複合的なモデル作成の基礎は構築された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進については、当初の実施計画通りに推進する。本研究の2つの重点的な研究課題は、(1)質的分析、量的分析、シミュレーション分析という、複数の研究手法を融合的に組み合わせ、核拡散のダイナミクス分析を行う、(2)その知見を踏まえて、核拡散防止のための政策研究を行う、である。 平成26年度においては、これまでの質的分析、量的分析、シミュレーション分析の検討を踏まえ、複合的なシミュレーションモデルの作成を進める。その成果は、最終年度の成果報告において、公表される。また、最終年度にとりまとめる、(2)の政策研究に向けて、平成25年度に主に行った文献調査をさらに継続するとともに、平成26年度にその研究を本格的に行う。その成果も、最終年度にとりまとめる。 最終年度の平成27年度には、上記(1)および(2)の研究成果を、学会報告や学術論文、書籍などの形で外部に発表する予定である。
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