2012 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける機能的協力の推進と地域ガバナンス形成に関する研究
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23530208
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
吉松 秀孝 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (90300839)
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Keywords | 東アジア / 機能的協力 / ガバナンス / 食料備蓄 / 環境保全 |
Research Abstract |
本研究は東アジアにおける機能的分野での地域協力、特に地域協力制度の構築プロセスに影響を与えた諸要因を解明することを目的としている。本研究では、主要アクター間の政治的相互作用とその背景にある政策選好、地域ガバナンスの形成に資する非国家主体の参画、そして重大な分岐点に代表される歴史的経路プロセスがそうした要因の中核となると仮定している。24年度は、昨年度構築した分析枠組みに沿って、対象となる実証分野における制度構築の状況ついてのデータ収集と分析を進めた。日本の内外でフィールドワークを実施、関係機関において聞き取り調査ならびに文献調査を進め、そうした調査を通して収集したデータの分析を精力的に行った。 24年度の研究を通して、東アジアにおける地域協力制度の構築に日本・中国という域内2大国の相互作用が大きく影響していること、特に制度構築の始動は日本によって行われたが、制度発展に決定的な影響を与えたのが中国であり、2大国の影響は歴史的経路プロセスの中で変化していたことが明らかになった。また、ASEANは東アジア地域協力における中心的地位の維持、韓国は北東アジアにおける中心的地位の確立に配慮しつつ地域制度の形成・発展に関わっていたことが明解になった。非国家主体の関与として研究者・研究機関の政策推進プロセスへの関与に焦点を当てた。確かに研究者の科学的知見や専門的知識が制度形成の場に提供されてはいるが、こうしたアクターと政府アクターの基本的関係が階層的であるために政治的配慮を超えた客観的視点から地域協力を促すことには限界があることが解明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主要アクター間の政治的相互作用、非国家主体の参画、歴史的経路プロセスを柱とした分析枠組みに沿って3つの政策領域における地域協力制度の形成に関し実証事実の分析を進めている。24年度は、日本、東南アジアでのフィールド調査を実施し聞き取り・文献調査を通して関連情報・データを収集、そうした情報・データの分析を年度末にかけて進めた。データの分析は順調に進んでおり、研究の進捗状況に特に問題はない。最終的に研究成果を単著として上梓すべくPalgrave Macmillan社へ出版プロポーザルを提出している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度から進めている実証データの分析をさらに継続するとともに、事例間の比較および他地域での地域協力制度構築の事例との比較を試みる。東アジア緊急コメ備蓄制度(EAERR)からASEAN+3緊急コメ備蓄制度(EAERR)への移行、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)構想から「EANET強化のための文書」の採択への展開、2国間自由貿易協定ネットワークから東アジアを包含する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)への展開という事例について、その制度形成・発展プロセスを丹念に叙述する。また、日本、中国、韓国、ASEANという4アクターの戦略と相互作用、非国家主体である研究機関・専門家の関与、経路依存と重大な分岐点の役割について慎重に分析を進める。そうした作業を通して、東アジア地域主義・地域制度構築に関する研究上の示唆と意義を導出する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も引き続き収集したデータの分析を進め、最終的な結論の導出につなげていく。複数の事例を総合的・体系的に分析・解釈することによって東アジアにおける制度構築プロセスと形成された制度の特徴を描出するとともに、そうした特徴を生み出した背景要因を探究する。25年度中に研究をまとめ上げて単著として出版するために原稿を出版社に送付する予定である。そのためデータ分析を進める過程で明らかになったデータの欠落を補うため国内および海外でのフィールド調査を実施する予定であり、そのための旅費を使用する計画である。また、研究成果を海外の主要な学会で発信するための旅費も計上している。 次年度の研究費の主な使用計画は以下のとおりである。関連書籍の購入費、東京での聞き取り調査のための国内旅費、東南アジア・韓国での聞き取り調査のための外国旅費、国際学会参加のための外国旅費
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Research Products
(5 results)