2013 Fiscal Year Annual Research Report
徳川幕府の外交儀礼――近世アジア域内交流から幕末対欧米外交への連続性を中心に
Project/Area Number |
23530209
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
佐野 真由子 国際日本文化研究センター, 海外研究交流室, 准教授 (50410519)
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Keywords | 国際関係論 / 外交史 / 国際関係史 / 朝鮮通信使 / 欧米外交官 / 幕臣 |
Research Abstract |
本研究は、幕末期、欧米諸国から来日する使節を将軍の居城に迎えて行う幕府の儀礼様式が、過去の朝鮮通信使迎接時の慣例を原点として順次整えられていった経緯を検証し、それを通して、近世を通じたアジア域内外交の経験が、幕末期に開始される欧米諸国を相手とした国際関係の土台となったことを、実証的に示そうとしたものである。 幕末における城中外交儀礼の初発事例とは、安政4(1857)年、西洋の外交使節として初めて登城し、13代将軍家定に謁見した米国総領事ハリスの迎接であった。この準備の過程では、担当の幕臣らによって朝鮮通信使の記録が紐解かれ、細かく検討されたが、筆者の2006年以来の研究を通じたその発見が、本研究の土台となった。本研究では、日本および諸外国の一次史料を用いてこの考察を深め、徳川幕府が執り行った外交儀礼の実態をより具体的に把握するとともに、他の近世武家儀礼一般、また、料理、服飾といった文化史各要素の研究成果を取り入れつつ、いっそう詳細な分析を行った。さらに、これを起点として、徳川幕府が崩壊するまでの展開に視野を広げた。 結果として、上記の事例に始まり、全15件(この数え方は各事例の位置づけ方によるため、現在、筆者自身の最終的な見解を模索中である)からなる「幕末外交儀礼」の全容を捉え、それらの様式が試行錯誤の中で連鎖的に整理されていった過程を捉えることができた。その入口は朝鮮通信使儀礼の伝統であり、出口は、外交実務の引き継ぎとともに明治政府にバトンタッチされ、本格的な西洋化への道をたどっていく。これは、従来の近世武家儀礼、あるいはより長期にわたる外交儀礼の研究において、完全に見落とされていた十数年間であり、より大きな日本外交史の連続性を考える上で、その解明が一つの大きな鍵となることは間違いない。
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