2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530220
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三野 和雄 京都大学, 経済研究所, 教授 (00116675)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 構造変化 / 経済成長 / 非相似選好 / 生産性格差 / 開放経済 |
Research Abstract |
構造変化のマクロ経済分析をめぐるこれまでの主要な研究を展望し、特に以下の重要な点に関して、既存研究では十分な分析がなされていないことを確認した。(1)構造変化の主要因である非相似型の選好をアドホックに仮定している。(2)構造変化のもう一つの要因である部門間の生産性上昇率の格差に関しても、多くの場合外生的な仮定が置かれている。(3)集計されたマクロデータが示すカルドアの定型化された事実と構造変化の実証的事実を整合させるために、モデルに特殊な制約を課す場合が多い。(4)大半の研究が閉鎖経済を対象としており、開放経済の構造変化に関する研究はごく少数である。 本年度は主として上記の(1)と(4)に関して、既存研究とは異なるモデルを構築し、具体的な分析を行った。まず、問題(1)に対応するために、私的消費については相似形であるが、異なる財ごとに消費の外部効果の程度が異なるために、社会的な選好は非相似形になるという仮定のもとで、効用関数の非相似性の大きさが内生的に変化すというモデルを設定した。このモデルでは、外部効果が相対的に強い財を生産する部門が経済成長の過程でより速く拡張し、構造変化が引き起こされる。モデルを分析した結果、生産技術に関する仮定をごく簡単なものにしても、(3)で指摘をした問題を回避したうえで、カルドアの定型化された事実と構造変化についての実証的事実を同時に説明できることを明らかにした。 次に問題(4)に対応して、小国開放経済モデルの構造変化を検討した。具体的には、非相似型選好を仮定する3部門ヘクシャー・オーリンモデルを設定し、各部門の生産性の上昇がどのような構造変化を引き起こすかを調べた。分析の結果、閉鎖経済の場合とはかなり異なる構造変化のパターンが現れることが明らかになった。 以上の結果については、それぞれ英文の論文を作成し、学会報告と査読誌への投稿を準備している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で示したように、平成23年度は、消費の外部性が生起する構造変化と小国開放経済の構造変化についてそれぞれ論文を作成した。いずれも既存研究では示されていない結果を導出することができ、一定の具体的な成果を上げることができたと評価される。また平成23年度の研究成果は、交付申請書に記した当初の研究計画にほぼ適応していると判断される。 ただし、23年度に作成したいずれの論文も、解析的な議論を可能にするために、いくつかの簡単化の仮定が置かれている。したがって具体的なデータと正確に対応させることは難しい。今後はこれらの理論モデルで置かれた制約のいくつかを緩め、数値的な分析を行うことも計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は以下の研究を予定している。 (1)世界経済モデルを用いた構造変化の検討:平成23年度に作成した小国開放経済の構変化の分析は、他国の構造変化を所与とした部分均衡分析である。本年度は世界経済モデル(2国モデル)を使い、ある国の構造変化が貿易や資本移動を通じて外国の構造変化をどのようなかたちで引き起こすかについて分析をする。(2)内生的な生産性変化を仮定するモデルの検討:各生産部門の生産性の変化が何らかのかたちで内生的に決まるモデルを設定し、選好の非相似性がもたらす需要構造の変化が生産性の変化に及ぼす効果を検討する。これにより、構造変化を引き起こす2つの主要因を同時に扱えるフレームワークを構築する。 これらのテーマに関してそれぞれ論文を作成する、それらを内外のセミナー・学会等で報告をしてコメントを受け、内容の改善を図る。また同様の関心を持つ研究者との討論や共同研究についても積極的に対応する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. 旅費 700千円:共同研究のために海外の研究機関に滞在するための旅費・滞在費、および海外で開かれるふたつの学会に参加するための旅費。2謝金:350千円: 大学院生をRAとして雇用するための費用、および情報提供者への謝金3.消耗品 250千円け: 書籍、およびコピュータ・ソフトの購入
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Research Products
(4 results)