2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530223
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
大住 康之 兵庫県立大学, 経済学部, 教授 (10223819)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 集計代替弾力性 / 資本・熟練補完 / 経済成長 / 所得分配 / 産業構造 / 労働移動 |
Research Abstract |
平成23年度では、主として、要素代替弾力性に関する既存研究の整理、および資本、熟練労働、不熟練労働の3変数の長期的な新古典派成長モデルにおける要素代替弾力性と成長の安定性について論文をまとめ、研究報告を行った。 前者に関しては、ミクロ的な生産関数の技術的性質や、産業やマクロ的な代替弾力性の定式化に焦点を当てた既存研究の整理を行い、展開可能性を探った。一方、後者に関しては、「Two-Level CES Productions, Mobility and Economic Growth」という題名の英論文をまとめ、平成23年7月兵庫県立大学で行われた「中期マクロ動学研究会」、ならびに同年8月福岡国際会議場で開催された「2011 Institutions and Economic International Conference」のLabor Mobilityセッションにおいて研究報告をし、Discussion Paperとしてまとめて、同じ内容のものを邦文で商大論集に発表した。この論文は、賃金格差に反応して部門間の労働移動が生じる場合には成長は安定化するけれども、貯蓄が主として熟練労働所得に依存するようなDiamond型経済では、資本と熟練間の代替弾力性の方が資本と不熟練労働間の代替弾力性より小さい場合の資本・熟練補完性がより現実的なある場合には、仮に内生的に決定される集計要素代替弾力性がある程度大きくとも、成長経路は局所的に不安定な場合が起こることを明らかにした。この集計代替弾力性は、資本と熟練間の代替弾力性、および資本と不熟練間の代替弾力性のみならず、労働移動の程度が織り込まれた変数として定式化されており、労働移動が全くない場合のPapageorgiou and Saam(2008)SJEのそれをより精緻化したものとなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
要素代替弾力性に関する既存研究の整理を進めて、さらには労働移動を考慮した集計代替弾力性の定式化と、この集計代替弾力性が成長の安定性にどう影響するかを理論的に考察した点で、実施時期の前後の違いは多少あるものの、当初の研究計画に沿っておおむね進展している。さらには、実証研究に際しても、データ等に詳しい研究者の専門的知識の提供を受けて意見交換をしながら、知見を整理し始めており、この点においても、おおむね研究の進展がなされている。ただし、当初先に行う予定であった産業構造の変化や財市場の動向が考慮された集計代替弾力性の定式化は十分に進んでいる状態ではないので、今後はこの理論的定式化が課題として残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進策として、引き続き既存研究の整理を進めながら、要素代替弾力性に関して展開可能性を深める。特に、今後の課題として、産業構造の変化、とりわけ先進国共通して生じている製造業部門の縮小とサービス部門の拡大という部門間の不均等な変化が考慮された場合の集計代替弾力性の定式化、さらには、財市場の動向が考慮された集計代替弾力性の定式化を進める。その場合、部門内の要素代替弾力性、財・サービスの部門間の代替弾力性のみならず、資本集約度の違いといった部門間の異質性が集計代替弾力性の定式化にとって重要になると思われるので、部門の不均等な伸張という異質性の増大が代替弾力性にどのような影響を及ぼすか、その当たりに留意しながら定式化をはかり、また、定式化された集計代替弾力性が成長や分配にいかなる影響を及ぼすかも可能な限り進めたい。 さらには、実証研究を進めて行くべく、日本経済の代替弾力性に関する実証データの整理ないし専門の研究者との提携を含めて、展開可能性を探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度実支出額は3月31日までに支出された額を記載したものであり、3月31日現在で発注・納品まで完了し次年度4月以降に支出された次年度では、研究図書や文献の購入、実証分析のためのデータ収集や統計ソフトの購入、文献に関する資料収集、関連研究者との意見交換、専門分野の研究者を招いて専門知識の提供を受ける等に研究費を用いて、当該研究を進める。得られた知見は論文としてまとめて、研究会や関連学会で研究報告をする。年度の前半では、研究旅費を用いて、アメリカのサンフランシスコで開催されるWestern Economic Association International(WEAI)の第87回年次総会のEconomic Growthセッションで、「Two-Level CES Production, Mobility and Economic Growth」という題名で研究報告を行う予定にしている。
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