2012 Fiscal Year Research-status Report
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23530223
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
大住 康之 兵庫県立大学, 経済学部, 教授 (10223819)
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Keywords | 集計代替弾力性 / 資本・熟練補完 / 経済成長 / 所得分配 / 構造変化 / 労働移動 |
Research Abstract |
平成24年度では、引き続き、集計的代替弾力性に関する研究の整理を行い、また、(1)資本、熟練労働、不熟練労働の3変数を用いた新古典派成長モデルにおける、代替弾力性と成長の安定性について研究報告を行い、さらには、(2)このような3変数を用いたモデルにおいて、資本・熟練補完性と熟練偏向的技術進歩のマクロ労働分配および賃金所得不平等に関する研究報告を行った。 前者に関しては、主として、産業やマクロ的な代替弾力性の定式化に焦点を当てた研究の整理を行い、展開可能性を探った。一方、後者に関して、(1)については、「Two-Level CES Productions,Mobility and Economic Growth」という題名で、平成24年6月29日-7月3日にアメリカのサンフランシスコで行われた第87回WEAI(Western Economic Association International)の年次総会の[36]Economic Growthセッションにおいて、研究報告を行った。また、同内容のものを同年11月に明海大学で行われた2012年度日本応用経済学会秋季大会において研究報告を行った。(2)については、「Two-Level CES Production Technology, Mobility and Aggregate Labor Shares - Skill-Biased Technical Change vs. Capital Intensity-」という題名で、平成25年3月14日-17日に東京の慶応義塾大学で行われた第10回WEAI隔年開催のPacific Rim Conferenceの[5]Prices and Production Functionセッションにおいて研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代替弾力性に関する研究の整理を進めて、近年の生産技術を反映する資本・熟練補完性(資本と熟練労働間の補完性の方が資本と不熟練労働間の補完性より大きい技術形態)やある種、制度を反映するような部門間の労働移動の程度が考慮された集計代替弾力性を定式化し、この集計代替弾力性や資本・熟練補完性が成長の安定性や、さらには、労働分配率、賃金不平等といった所得分配にどう影響するかを理論的に考察した点で、実施時期の前後はあるものの、研究計画に沿っておおむね進展している。特に、成長の安定性や労働分配の動向に関して、成長の安定条件や労働分配率の低落条件や賃金不平等が格差が拡大する条件を、式だけではなく、図を用いて明解に表せたことは研究の成果として進展が見られた。 しかしながら、産業や財市場の動向が考慮された代替弾力性の定式化を進めている途上であるが、今年度の主要な課題として残されている。さらには、政策的含意ついても、知見をまとめる予定である。実証データに関しては、専門研究者と意見交換をしながら、成果に取り入れて進める予定でいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進策として、引き続き、研究の整理を進めながら、産業構造の変化、とりわけ先進国で共通して生じている製造業部門の縮小とサービス部門の拡大を含意するような部門間の不均等な変化が考慮されるような集計代替弾力性の定式化を進める。その場合、部門内の資本と労働間の代替弾力性や財・サービスに対する需要間の代替弾力性のみならず、ストーン=ギアリー型のような異なる需要の所得弾力性を生み出す効用関数によって、集計代替弾力性はどのように定式化できるかを進める。集計弾力性は、各部門の資本集約度の分散の形態でウェイト付けされた各弾力性の加重平均で表されるようになるよう思われるので、その当たりに留意しながら定式化をはかる。定式化された集計代替弾力性は、部門間の相違が大きくなるほど、拡大する傾向があるかどうかを分析の中心として進める。もし、拡大するならば、労働分配率は趨勢的に低落する傾向があるからである。日本経済のデータを通じて、そのような状況かどうかも、進めうる限り推進し、政策的含意を探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度では、研究図書や文献の購入、実証データの収集や統計ソフトの購入、文献に関する資料収集、関連研究者との意見交換、また、専門分野の研究者を招いて研究会の開催や専門的知識の提供を受ける等をして、当該研究を進める。得られた知見はディスカッションペーパーや論文としてまとめて、旅費を用いて研究会や関連学会にて研究報告をし、また、これまでの得られた知見等をまとめる作業に取りかかる。
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