2011 Fiscal Year Research-status Report
家計の住替行動、信用制約と住宅価格変動の経済的分析
Project/Area Number |
23530225
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
瀬古 美喜 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (60120490)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒田 達朗 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (00183319)
隅田 和人 金沢星稜大学, 経済学部, 准教授 (10350745)
直井 道生 東京海洋大学, 海洋工学部, 助教 (70365477)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 遡及型住宅融資 / 流動性制約 / 転居 / 住宅価格変動 |
Research Abstract |
わが国の住宅金融が遡及型融資制度に基づいているために、流動性制約が著しい転居阻害要因になっており、それが住宅価格の変動にも多大な影響を及ぼしていることを検証した。 まず全国の家計の個票パネルデータを使用して、ロジットモデルによりロックイン効果の検証を行なった。その結果、正の純資産を持つ(住宅・非住宅資産の価値が住宅ローン残高を上回る)家計に関しては、遡及型融資制度に基づく住宅ローン残高と住宅資産価値の比率であるELTVの上昇は、新規に購入する住宅への頭金の減少を通じて、買い替え確率を減少させることが明らかになった。それに対して、純資産額が負である家計は、買い替えようとしても、新規に購入する住宅のための頭金が不足するため、深刻な流動性制約に直面することになる。そのため、ELTVが上昇しても、転居への効果はなかった。すなわち、家計の純資産の水準に依存して、非対称的なロックイン効果が存在する結果が得られた。 次に、都道府県単位のパネルデータを用いて、誤差修正モデルにより、遡及型融資制度と非遡及型融資制度のもとでの流動性制約の住宅価格変動に及ぼす影響の比較分析を行なった。その結果、非遡及型融資が主流なアメリカでは、LTVの比率が高い地域ほど住宅価格の変動が大きくなっているが、遡及型融資制度を採用している日本ではELTVの比率が高い都道府県ほど、変動は小さくなっていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1)理論分析に関してはサーベイを行なった。2)リコース制下での住宅価格変動分析については、(あ)家計の住替行動と住宅価格変動リスクのミクロ実証分析を行ない、その分析結果を、査読付き国際学術雑誌に掲載した。さらに、(い)都道府県間における住宅価格変動リスクのマクロ実証分析を行なった。(あ)(い)のそれぞれの分析については、著書に所収の論文として刊行した。3)リコース制・ノンリコース制下での住宅価格変動リスクのマクロ実証比較分析を行ない、アメリカなどのノンリコース制の実態を調べた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、1)理論分析では、理論モデルの構築を検討する。2)リコース制下での住宅価格変動分析に関しては、学会や、セミナーでの発表、データの更新、政策提言、制度の評価などを検討する。3)リコース制・ノンリコース制下での住宅価格変動リスクのマクロ実証比較分析は、アメリカのデータの整備、時系列分析の準備などを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
諸外国の不動産担保制度の実地調査や、精緻な実証分析のためのプログラムの構築用のPCやソフトの購入、国内外の学会での発表などに使用する計画である。尚、平成23年度には予定していた学会発表を行なう海外出張に行かなかった等の理由で残金が出たが、それは平成24年度の海外・国内出張等に充当する予定である。
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Research Products
(18 results)