2013 Fiscal Year Research-status Report
家計の住替行動、信用制約と住宅価格変動の経済的分析
Project/Area Number |
23530225
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
瀬古 美喜 武蔵野大学, 政治経済学部, 教授 (60120490)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒田 達朗 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (00183319)
隅田 和人 東洋大学, 経済学部, 准教授 (10350745)
直井 道生 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (70365477)
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Keywords | 遡及型融資制度 / 非遡及型融資制度 / 不動産価格の変動 / 転居 |
Research Abstract |
不動産価格の変動を、金融市場の不完全性を前提として、住宅金融制度との関連から検討した。特に、不動産価格と景気循環の関係、住宅市場における融資制度の設計の問題に対して、転居阻害要因と住宅価格変動の分析を通じて、現行制度の問題点と、今後の方向性を示唆した。 我が国の住宅市場の融資制度の設計の問題に注目し、諸外国の融資制度の長所短所との比較分析を行なった。現在、国際的にみても、日本を含めて、債務不履行時に、担保住宅以外の資産に対しても請求権が及ぶ、遡及型融資制度を採用している国がほとんどである。それに対して、アメリカは、債務不履行時に、担保住宅以外の資産に対しては請求権が及ばない、非遡及型融資制度を取っている 。 不動産価格と景気循環の観点から、両制度の価格安定化機能を対比してみると、非遡及型融資制度の場合は、住宅価格の下落時に、担保住宅の価値が住宅ローン残高を下回る場合には、家計は意図的にデフォルトするため、住宅価格下落時に住宅供給が増加することになる。したがって、住宅価格はさらに下落することになると思われる。しかし、見方を変えれば、このことは、価格メカニズムによる自律的な回復が早いことにも、つながる。それに対して、遡及型融資制度の場合には、住宅価格の下落時に、担保住宅の価値が住宅ローン残高を下回る場合には、新規の住宅ローン借り入れに対する深刻な流動性制約のために、転居が阻害され、住宅価格の下落は限定的となる。 非遡及型融資制度の長所としては、担保住宅の価値を維持するという誘因を与えるため、住宅の質の向上につながることが考えられる。それに対して、短所としては、遡及型融資制度の場合には見られない、借り手の意図的なデフォルトを助長する側面がある事であろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
家計の住替行動、信用制約に関する理論モデルに基づき国際比較の実証分析を実施する予定であったが、海外の実証分析の結果がデータの精度の点から明確に得られなかったため、計画を変更し、より一般的な理論モデルの再構築と、シミュレーションを中心とする分析や、直近の変化しつつある経済情勢を反映した政策提言を行なうこととしたため。
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Strategy for Future Research Activity |
理論モデルの再構築とシミュレーションを中心とした分析や、より最近の経済事情に対応した最新の政策提言を考案し、発信していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に、家計の住替行動、信用制約に関する理論モデルに基づき、国際比較の実証分析を実施する予定であったが、海外の実証分析の結果がデータの精度の点から明確に得られなかったため、計画を変更し、より一般的な理論モデルの再構築と、シミュレーションを中心とする分析を行うこととしたため、未使用額が生じた。 このため、理論モデルの再構築とシミュレーションを中心とした分析を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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Research Products
(18 results)