2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23530226
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
尾崎 裕之 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (90281956)
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Keywords | 数理経済学 |
Research Abstract |
平成25年度の研究成果として、"Subjective error measure"と題する論文を完成させた。以下で、この論文の内容を説明する。サベッジの主観的期待効用理論によると、意思決定者の行動が幾つかの公理と整合的であるならば、彼女はあたかも或る効用関数と或る確率測度を持ち、それを使って計算された期待効用(効用の期待値)を最大化するように行動しているとみなすことができる。その一方で、期待効用は、導出された確率測度によって計算されるランダムな効用の、「二乗誤差」を最小化するという意味で最良な近似となっている定数であることが数学的に容易に示される。しかし、意思決定者が、「二乗誤差」を用いて近似を行っていると決めてかかって良い理由は特にない。例えば、彼女は、過大評価による誤差を、過小評価による誤差よりも重く受け止め、前者を後者より割り増して計算するかもしれない。このように、どのような誤差の尺度を用いて計算をするのかは、意思決定者の選好から(効用関数や確率測度のように)導き出されるべきだと考えられる。これを「主観的誤差」と呼ぶことにする。当該論文では、この主観的誤差が必ずしも二乗誤差と一致するとは限らないように、サベッジの公理系を弱めた。その上で、一定の条件を満たす主観的な誤差の尺度を用いて非期待効用を計算し、その値の最大化を目指すような意思決定者の行動を特徴付けた。伝統的な統計的意思決定理論と公理的意思決定理論の融合という新しい研究テーマの創出という観点から見て、一定の意義を持つ研究ではないかと考えている。なお、この論文は、平成25年5月29日から31日にわたってパリで開催された意思決定論に関する国際会議であるRUDで、報告論文として採択され、31日に発表を行った。また、平成25年9月13日に開催されたTCERミクロコンファレンスにおいて、招待講演として報告を行った。
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Research Products
(7 results)