2011 Fiscal Year Research-status Report
曖昧な提携と協力ゲームの交渉解:市場による解法の限界を越えて
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23530230
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
佐柄 信純 法政大学, 経済学部, 教授 (90286005)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ファジィ提携 / 協力ゲーム / コア配分 / 市場メカニズム |
Research Abstract |
本研究では、曖昧な提携をともなう協力ゲームの交渉解の性質を分析し、市場メカニズムによる交渉解の実現可能性とその限界を明らかにするとともに、集団的意思決定に関する様々な応用問題を考察するのが目的である。伝統的な市場ゲームでは、プレイヤーは初期保有量のすべてを参加する提携に拠出することを同意した上で実現した提携利得がプレイヤーに配分されるが、【ファジィ提携】では、プレイヤーは必ずしも初期保有量のすべてを提供する必要はなく、その一部を自由に提供することで提携へのコミットメントの度合いを決定することができる。同質的分割可能財が存在する交換経済においては、【ファジィ・コア配分】が【ワルラス配分】(競争均衡配分)に一致することが知られている。ファジィ提携を考慮しない場合、市場メカニズムでは実現できないコア配分が一般的に存在するが、交渉解の一つであるファジィ・コア配分は市場メカニズムによって実現することができる。この結果を肯定的に解釈すると、ファジィ提携の導入によって、ゲームの任意の交渉解が市場による解法で達成できる可能性が示唆される。一方、ポスト京都議定書の枠組み作りはCO2 濃度という国際公共財の費用負担とフリー・ライダー問題としての側面もあり、市場メカニズムでは上手く解決できない懸念もある。ファジィ協力ゲームの解概念を再検討することは、「市場では達成できない可能性がある望ましい解をどのようなゲーム・ルールで実現するか」というポスト京都議定書が直面するきわめて現実的な問題に対して、新たな知見を与えることにも繋がる。 上記の問題意識の下、本年度は次の研究成果を得た。σ-代数上で定義される新しいゲームのクラスとして、μ-凸ゲームを提唱し、平均単調ゲームとの関係を分析した。また、μ-凸ゲームのコアに関する性質を衡平分割問題に応用し、α-衡平パレート最適分割およびコア分割の存在を証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は国外での学会報告4回、国内での学会報告2回、他大学での研究会報告1回を行い、積極的に国内外で研究成果を発表することができた。その研究成果は3本の学術論文と4本の学会報告集として出版された。学術論文の内訳は2本の英語論文と1本の日本語論文である。英語論文の一つは、海外の査読付きジャーナルに掲載された。もう一つの英語論文では、最適化理論の編著の1章を担当し、衡平分割に関するサーベイ論文を執筆した。日本語による解説論文では編著の1章を担当し、σ-代数上の選好順序とその応用に関して、筆者の貢献も踏まえ、最新の研究成果を総合的に報告した。このように学術研究を専門ジャーナルだけでなく、より広い読者層を期待できる研究叢書に論文を収録する形で公表した。以上のことから、研究成果を計画通りに発表することができたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度と同様に研究成果を学術論文にまとめ、積極的に国内外で研究報告を行い、同分野の研究者との交流を深め、最先端の研究をフォローするとともに、研究上の新たな着想を得る一助にしたい。国内外の大学の研究会で研究報告を行い、研究会の参加者との質疑応答を通して多角的なコメントを得ることにより、論文の改善を図る。これは研究プロセスにおいて最も重要な仕事であり、新たな問題の着想にも繋がる。今年度は在外研究でJohn Hopkins大学に滞在する予定であり、そこで新たな共同研究を始めるとと共に、アメリカ各地でのセミナー報告を計画している。前年度と同様、定期的に学外から研究者を招待し、研究会を開催することにより、新たな研究領域の開拓に努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年9月から1年間在外研究でJohn Hopkins大学に滞在する予定であり、研究の拠点が一時的に日本からアメリカに移る。これに併せて、アメリカで使用する研究費を確保するため、今年度の研究費の3割程度を次年度に繰り越した。次年度の研究経費としては、本年度と同程度の額を支出する計画である。本年度と同様に、アメリカ、ヨーロッパ、日本の学会にも積極的に参加する予定である。研究経費の主な内訳は、国内・国外学会参加費、国内・国外旅費、研究用図書購入費、研究会運営費、消耗品などである。
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Research Products
(9 results)